レビューコーナー
ワインは想いがこもった素敵なお酒(Part 1)
2009/12/18 PART 01
【Château Clerc-Milon. 2006 / フランス、ボルドー地方、メドック地区 ポイヤック村】
クレール・ミロンは、メドック格付け5級のポイヤック村の赤ワイン。
畑はムートン・ロートシルト(メドック格付け1級)とラフィット・ロートシルト(こちらも1級)の間という、とても恵まれた場所に位置していて、所有者はBaronne Philippine de Rothschildです。
(バロン・フィリップはムートン・ロートシルトやダルマイヤックの所有者。現在この3シャトーは同じ醸造チームがワイン造りを行っています。)
このワインのエチケット(ラベル)には男女が楽しそうに踊る姿が描かれており、その姿が楽しそうな姿がご夫婦や恋人達を想わせるところから、結婚記念日やバレンタインデーなどの愛にまつわる記念日に贈られること多いようですが、実はこのワインには悲しい愛のエピソードがあるそうです。
妻と愛娘と共に幸せに暮らしていたバロン・フィリップでしたが、第二次大戦が起こり、ユダヤ系の彼は財産を没収されるのみならず、愛する妻や娘と離れ離れになってしまいました。
終戦後、彼は必至に妻と娘を探しますが、残念ながら妻は収容所で亡くなり、愛娘は行方がわかりませんでした。
愛する者を失い失意のどん底にあったバロン・フィリップでしたが、彼は懸命に仕事に精を出し荒らされた畑に手をいれ再び素晴らしいワインを造り、名誉と富を手に入れていきます。
ある日、自ら所有するムートンの畑を眺めていた時、ふと隣の畑に目がとまりました。
小さいけれど手入れの行き届いた畑。若い娘が精力を注いでワインを造っていると聞き、どんな娘なのかと調べてみたら・・・それは生き別れになっていた愛娘フィリピーヌ。
そう劇的な親子の再会を果たすのです。
70年にバロン・フィリップ・ド・ロートシルト社がクレール・ミロンを買収し、親子で協力し合い素晴らしいワインを毎年リリースし続けます。
そして、クレール・ミロンのエチケットに描かれた踊る男女の姿は、愛娘フィリッピーヌが平和で幸せだった幼いころの仲の良い両親の様子をイメージしたものと言われています。
とても美しい深紅の色調。じっくりと熟したカベルネ・ソーヴィニヨンの味わい。
スパイシーな香りと凝縮された果実味。渋味と酸味が複雑に支えあうワイン・・・。
ワインはさまざまな想いがこめられた素晴らしい飲みもの。
私達は単にメドック5級のワインを口にするのではなく、さまざまな歴史や想いを沁み渡らせているのかもしれません。
Château Clerc-Milon. A.O.C. Pauillac
仏、ボルドー地方、メドック地区 ポイヤック村 メドック格付け5級
Cabernet Sauvignon 70%、Merlot 20%、Cabernet Franc 10% (2006)
コラム作者:プロフィール
ソムリエール KANNA 日本ソムリエ協会認定 シニアソムリエ NPO法人 チーズプロフェッショナル協会認定 チーズプロフェッショナル |
PART 01