ワイン 百一話
絵画に見るワイン 4 (Part 4)
2011/09/08 PART 01 | 02| 03| 04
ルノワール(1841-1919)
フランス印象派の運動に参加した画家です。豊かで明るい色調で人物描写を得意としました。代表作には『ムーラン・ド・ラ・ギャレット』があります。
ワインが出ている作品は『昼食の終わり(1879年)』。原語La fin du déjeunerの直訳です。
舞台はモンマルトルのカフェ。食事をすませ、テーブルを挟んでくつろいでいる男と女。その後ろに立つ若い女。女の一人は白い服で白い帽子、もう一人の女は黒い服に黒い帽子。一人だけの男は黒い服。女優のエレン・アンドレーは、もちろんくつろいでいる白い服の女です。
白いクロスのかかったテーブルの上には、上質のティーカップやグラスが見えます。グラスの底がわずかにピンク色に染まっていることから、赤ワインを飲んだようです。テーブルの上にはデカンタが二つもありますから、贅沢な昼食だったに違いありません。
エレンは右手に、小さなリキュール用のグラスを持っています。中に入っている酒は透明ですから、オー・ド・ヴィーでしょう。きつい酒です。目線はやや遠くを見ていますが、満ち足りた表情であり、豊かさが感じられます。
男の方は、顔が赤く、十分に飲んだという満足げな表情であり、タバコに火をつけているところです。
絵が描かれた時期が、その時のモデルの生活を、そのままを表現していると仮定しましょう。すると、1877年の『アブサント』から二年後のこの絵を見る限り、エレンにはもはや絶望はないように見えます。よい後援者を見つけたのでしょうか。ちなみに、男はナントの船主の息子とされています。
モデルには友人を選んでいるようですが、ドガの友人であるすさんだ表情の画家マルスラン・デブータンと、ルノワールの友人である船主の息子を見比べると、両極端であって興味深いところがあります。
『舟遊びの昼食(1881年)』は原語Le déjeuner des canotiers。 canotiersは舟を漕ぐ人という意味なので、和名は原語のほぼ直訳です。
舞台はセーヌ河畔にあるレストラン・フールネーズのテラス。男九人と女五人の若者たちが、昼食を終えてくつろいでいます。
画面の中央にはテーブルが二つあり、手前のテーブルの上には、赤ワインのボトルが四本見えます。一本は空ですが、二本を飲み残したようです。一本はまだ空けていません。
形の違うワイン・グラスが並び、グラスの頃には赤ワインがまだ少し残っています。リキュール用の小さなグラスには、茶色の飲み物が半分以上残っています。ブランデーですね。もう、十分に飲んだ、という表情のテーブルの上です。ぶどうと梨も見えます。
■ゴッホ(1853-1890)
オランダの画家で、燃えるような色彩と激しい個性的な画風を得意としました。代表的な作品には、糸杉、アルルのはね橋があります。
作品『レストランの内部(1887年)』。和名は原語Intérieur de restaurntの直訳です。
点描的な手法が見事なこの絵には、開店直前の用意万端が整ったレストラン内部の雰囲気が伝わってきます。白く垂れ下がったテーブルクロス、伏せられたワイングラス、白いお皿そしてそれぞれのテーブルに飾られた花です。
ワインはいつでもサービスできるように、デイ・セラーに移されました。
このテーブルに次に座るのは、きっとあなたです。