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酒国漫遊記(Part 7)
2009/12/15 PART 01 | 02| 03| 04| 05| 06| 07| 08| 09| 10| 11| 12| 13| 14| 15| 16| 17| 18| 19| 20| 21| 22| 23| 24| 25| 26| 27| 28
【Artと日本酒ラベル】
アレクサンダー・ゲルマン氏はグラフィックデザイナー、客員教授、ブランドディレクターなど
数々の肩書きを持つ男。ニューヨーク近代美術館(MoMA)において「あらゆるメディアにおいて最も影響力のあるアーティストの一人」だと32歳の時に名を刻んだ人物です。
その彼が、グローバル化の対極にある日本の地方文化の中で、匠の技術と文化を発見し、世界に通用
するビジネスの可能性の宝庫として評価した工芸、芸能、料理、美意識などを纏めて、世界から見た目から紹介した本が2009年10月末に発売された「ポストグローバル」(PHP研究所)です。
その本の中にも登場しますが、彼のお気に入りの酒の一つが「天狗舞」。山廃純米の代名詞としてもよい、全国的にも名前の知れた銘酒の一つで、今回蔵の専務と彼の交流の中から、天狗舞純米大吟醸」を5年熟成させたお酒のラベルがデザインされました。
外国人にとって数多くある日本酒の銘柄をラベルで見分けることは難しく、大概は漢字で読み分けられないし、美味しいお酒を頂いても、覚えられないと次に同じ銘柄を指定できないという課題を単に銘柄名を
アルファベット化するだけではなく、現代のタイポグラフィーを用いて視覚的にも聴覚的にも記憶しやすいラベルを作り上げることで、日本酒と海外のコミュニケーションを拡げる役割を果たしていきます。
もう一つ、アートラベルを積極的に取り入れているのが「人気一」福島県二本松市にある人気酒造は、小さな蔵ですが、日本酒の伝統が効率化のもとに失ってきた価値を取り戻したいという蔵元の思いに正直にこだわった造りをしています。
この蔵の凄いところは、地方で伝統にこだわる造りをしながらも、外に目を開いたマーケティング力。モダンなダイニングテーブルやインテリアになるように、選ばれたラベルやボトル、季節感を重視した商品は、日本酒を愉しむシチュエーションを増やしてくれます。
特にラベルアートはアートディレクターと作者の意図と蔵元の思いが、とてもよく表現されています。
両蔵ともにお酒の素晴らしさは勿論折り紙つきですが、人と人との真ん中にあるArtラベルからも、さらに新しい会話が広がっていくことを願います。いつかMoutonのラベルのようになる日も・・・。
アレクサンダー・ゲルマン「ポストグローバル スーパーデザイナーが見た日本」
http://www.php.co.jp/bookstore/detail.php?isbn=978-4-569-77413-8
アレクサンダー・ゲルマン ホームページ http://glmn.com/
天狗舞/車多酒造ホームページ http://www.tengumai.co.jp/
人気酒造ホームページ http://www.ninki.co.jp/
コラム作者:プロフィール
入江啓祐(いりえ けいすけ) 2007年イタリア駐在時代の縁から株式会社Spazio Incontroに入社。 |
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