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酒国漫遊記(Part 23)
2010/04/18 PART 01 | 02| 03| 04| 05| 06| 07| 08| 09| 10| 11| 12| 13| 14| 15| 16| 17| 18| 19| 20| 21| 22| 23| 24| 25| 26| 27| 28
【江戸の酒】
「くだらない」という言葉の語源は、日本酒の樽廻船によるという説があります。上方から関東に送られる物資は「下(くだ)りもの」と呼ばれていたのですが、その当時からの酒造り
の本場である灘、伏見からも当然のことながら日本酒が江戸へ、東海道を下って運ばれてきていました。そこで上方の酒を「下(くだ)り酒」と呼んだのです。それに対して、関東の酒は東海道を通ることがないので「下(くだ)らぬ酒」と呼ばれたそうで上方の酒に比べて原料の米、水質ともに悪かったせいか、味も数段劣ったそうです。
実はこの話、どうも語源としては正しくない(この説の時代以前から「くだらない」という言葉は使われていたそうで・・・)というのが定説になっていますが、このような話が実しやかになるほど酒のレベルが劣っていたというイメージを持たれています。しかし本当にそうでしょうか?確かに江戸の初期は上方に集まる技術や文化には敵わなかったかもしれませんね。
しかし時代の安定を経て全ての逸品が江戸に集まるようになった結果、製造方法や職人なども含めて、日本酒のレベルが高まったことは想像できます。なぜなら江戸幕府の下に良い米が集まるようになり、手に入るようになったことに加えて、ご存知のとおり東京にも名水が多々あるからです。多摩川の本・支流沿いにある秩父古生層を流れる地下水脈からは酒造りに適した良質の中硬水が得られます。
江戸落語、例えば「長屋の花見」「らくだ」「もう半分」「のめる」「花見酒」など、多くの演目の中でとり上げられている場面、見栄っ張りの江戸っ子にとっては「上方の酒」を口では最上と言いながらも、実のところは江戸の酒を多く飲んでいたのではないでしょうか。またちょっと固くるしく歴史的、経済的事実で言うと、お酒造りというのはいつの時代も政府の統制や意向に影響されながら、税収確保のためには生産奨励がなされてきた産業・産品であります。
江戸時代中期になると、お酒を造って売る側の藩の収入が上がることを、幕府が嫌ったということが、この地域の酒造りを発展させることに大きく影響しています。すなわち、江戸っ子が払う酒代で関西・上方が富むというのは、幕藩体制上はあまり好ましくないと考えたとされており、そのために幕府お膝元での酒造りが奨励されたという側面もあります。東京の蔵元は現在11蔵。北区にある小山酒造を除いては全て三多摩地区に集まっています。水は深井戸から採取したもの、または秩父の硬水、中硬水中心で、味わいは淡麗 でスッキリしたクセのないタイプが多く見られます。地理・歴史的なつながりからか、越後杜氏が多いようです。
「金婚」という御目出度い名前を持つ豊島屋本店。造りは東村山で行われていますが、オフィスは慶長元年(1596年)酒問屋としての創業の地にあります。「江戸の酒の草分け・白酒」で有名となり、正に「神田の生まれ」の江戸っ子御用達の醸造販売元です。ちなみにこちらは醤油、味醂も醸造していますが、江戸中のそば屋さんとの取引は今でも最大手の一つ。皆さんにも馴染みの味かもしれませんね。
福生にある「多満自慢」を造っている石川酒造。1863年創業で今に残る土蔵の保存状態がとても良く、映画、時代劇やドラマのロケでそのまま使われることもしばしば。新潟の酒に多い「無糖加*」は、日本酒通の中ではとても評判の高い普通酒。カップ酒では抜群の味です。また同じ敷地内で造る地ビール「福生ビール/多摩の恵み」も評判がいいです。(*普通酒には副原料として糖類、糖類、酸味料、うま味調味料、酒粕などを加えることが条件付で認められています。)
そして「澤乃井」を造っている小澤酒造は、元禄年間の創業。多摩川上流の美しい渓谷の途中にある、青梅の沢井という地にあります。170年前の井戸から湧き出る岩清水が使われていて東京では一番造りの大きな蔵です。長い伝統に則ったつくりの一つとして、木桶作りのお酒復興にも参加されるたり、長期熟成の酒づくり、最新鋭のパステュラーザー(瓶詰め充填&殺菌)機を導入するなどこだわりの研究を続けています。ちなみに、この木桶を新品で作るところからやられたのは全国でも多分ここだけ。裏山の八幡社のご神木から樹齢200年の杉の木を切り出して作られたのはいいのですが、直ぐには使えず灰汁取りなどのご苦労もあったようですが・・・。勿論レギュラーのお酒もスッキリと辛口銘柄が揃った東京の銘酒です。
豊島屋 http://www.toshimaya.co.jp/
石川酒造 http://www.tamajiman.com/
小澤酒造 http://www.sawanoi-sake.com/
東京都酒造組合ホームページ
http://www.tokyosake.or.jp/tokyo-kura/tokyo-kura.htm
☆5月22日(土) ワインスクール・レコール・デュ・ヴァンで
小澤酒造に行かれるそうです。
是非!この機会に一度 蔵元に足を運ばれてはいかがですか?
http://www.duvin.jp/course/special.sawanoi.html
コラム作者:プロフィール
入江啓祐(いりえ けいすけ) 2007年イタリア駐在時代の縁から株式会社Spazio Incontroに入社。 |
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