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現役ソムリエのコラム


ソムリエのフランス研修日記 Part2

2010/05/05 田辺公一

レストラン サンドランスへ
 
2008年 6月某日。 パリ・マドレーヌ教会のすぐそばに位置するミシュラン二ツ星のレストラン「サンドランス」での研修の始まりです。 こちらのレストランは、近年まで3ッ星でしたが、オーナーシェフであるサンドランス氏が、「もっと多くの方に自分の料理を味わってほしい」という意志のもと、 あえて三ツ星をミシュランに返上し、世界でも大きな話題をよんだレストランです。
そういった理由から、一旦は星なしとなりましたが、現在は再び二ッ星のレストランとして、以前と変わらず多くの方に愛されています。 レストランのスタイルとしてはしっかりとした高級感もありながらモダンな内装と雰囲気を醸し出していて、以前 勤務していた東京のホテルのレストランと重なるイメージで、勤務初日からレストランの雰囲気にとけこんでいけたのではないかと思います。 私が担当させていただいた仕事は、主にグラスワインとミネラルウォーターのサービス。(時にはVIPルームでマグナムボトルのシャンパンのサービスも)
料理を運んだり、お皿を下げたりすることは一切なく、飲料に関することのみを終始徹底して行いました。
 こちらのレストランでは、コース料理も用意していますが、グランドメニューにはアラカルトのみの表記で各料理一品ずつにソムリエがすすめるグラスワインが併記されています。(世界で初めて、アラカルトを含めた全ての料理に1種ずつのグラスワインを提案し、メニューに載せたことでも有名。)

 ランチ、ディナー共に毎日100名、1日200名を超えるお客様の御来店がありましたが、そのほとんどの方がオーダーした料理ごとに(アペリティフ〜デザートまで)グラスワインを御注文されるので常に大忙しの状態が続きます。
料理とワインの組み合わせの中に、本日のスペシャリテである鴨を使った料理にキプロスのコマンダリアを合わせていたり、ユニークな提案がいくつも見られました。 レストラン研修最終日の業務を終え、ホテルへ戻ろうとすると、ソムリエのジュリアンが私を呼びとめます。コミソムリエのダビッドを交えての最後のブラインドテイスティング決戦の始まりです。結局勝負の結果は熱戦の末引き分けに終わり、「勝負は世界コンクールに持ち越しだ!」とお互い誓いを立て、レストランを後にしました。
 
 フランスのレストランで働き、一番勉強になったことは、「集中力」です。
休憩時間は、もちろん営業中でもバックサイドにいるときは、みんなとてもリラックス
していているのに、いざフロアに出た瞬間スイッチが入ったかのごとく、無駄なく、
スピーディかつエレガントにサービスの仕事に集中し、忙しい中でもとにかくゲストを
喜ばせることに全力を注ぎます。
 日本でいえば超高級レストランの価格帯にもかかわらず、毎日200名を超えるゲストが
世界中から来店されるのは、料理はもちろん、このサービス陣の力であると
確信できました。 ワインの国、美食の国フランスの環境に身を置いたことは、これまで、日々自分なりに試行錯誤を繰り返しながら積み重ねてきたことから、さらに一歩も二歩も踏み出した内容であり、1人のソムリエとして、そして日本人としてこれからどうあるべきか、と考える良い機会となりました。 今後も良いソムリエとは?すばらしいサービスマンとは?ホスピタリティ、人間性の向上について問い続けていきたいと思います。

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コラム作者:プロフィール

田辺公一
日本ソムリエ協会認定 ソムリエ
2005年 ロワールワインソムリエコンクールファイナリスト
2007年 キュヴェルイーズポメリーソムリエコンテスト優勝
神戸北野クラブ、ザ・リッツカールトン東京等、
ホテル、レストランでソムリエを務める
現在 恵比寿のワインスクール レコール デュ ヴァン講師


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