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酒国漫遊記(Part 15)
2010/01/21 PART 01 | 02| 03| 04| 05| 06| 07| 08| 09| 10| 11| 12| 13| 14| 15| 16| 17| 18| 19| 20| 21| 22| 23| 24| 25| 26| 27| 28
【磨きの技】
日本酒造りの中で、その品質を定めるキーポイントがいくつかあります。
「酒米選び」「麹づくり」「仕込み期間」「搾り」などそれぞれのプロセスに蔵の個性やこだわりがあらわれます。その中で「精米」も大きなファクターです。精米歩合60%以上なら「吟醸」、50%以上なら「大吟醸」を名乗れるわけですが、磨きの率だけではなく、酒米の中心にある「心白」と呼ばれるデンプン質の核をいかに上手く取り出し、周辺の雑味につながるたんぱく質や脂肪の部分を削り落とせるかということが、澄んだ酒を造る鍵になります。
精米の過程では、米が熱を持って変質したり、砕けたりしないよう慎重に作業が行われます。吟醸、大吟醸の精米作業は丸2日、丸3日かけて行われる場合もあります。
純粋にデンプン質の比率が高ってゆくほど洗練された味を引き出すことができる反面、精米歩合が高くなればなるほど米の品種の個性が生かしにくくなり、発酵を促すミネラル分やビタミン類も失われるので、後の工程での高度な技術が要求されることになります。
今、最も人気のある蔵の一つが山口県の「獺祭」。
小さい蔵には珍しい四季蔵(1年を通して酒造りをしている蔵)ですが、その評価は日本、海外ともに高く「創世記エバンゲリオン」の劇場版では主人公の一人の部屋に「獺祭」の瓶がズラリ。というシーンがあります。全人類が半減しても日本酒メーカーは残るということですね。(笑)
2009年の夏にはこの「獺祭 純米大吟醸 磨き二割三分」がJALの国内線ファーストクラスに採用されました。二割三分・・・すなわち精米歩合23%=77%を使わないということです。同じ銘柄の純米大吟醸で39%、50%の磨きもありますので、飲み比べて見て頂くのも違いがわかって面白いと思います。
他にもこの蔵は搾りに「遠心分離機」を使われたり、発泡やおりがらみのお酒も色々なタイプを造られるなど、意欲的な蔵元の一つです。
ちなみに・・・世に出ることは殆どありませんが、私は15%の磨きのお酒を頂いたことがあります。テストの精米では8%、11%・・・・。これが出来る技術のある蔵の話はまた別の機会に。
旭酒造のホームページ
http://asahishuzo.ne.jp/
コラム作者:プロフィール
入江啓祐(いりえ けいすけ) 2007年イタリア駐在時代の縁から株式会社Spazio Incontroに入社。 |
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