ワイン 百一話
シャトー・マルゴー(Part 1)
サンテミリオンのシャトーを訪問しているときのこと、現地のホテルのロビーで、懐かしい顔にであったのです。そして、「あっ!」とこちらが声を上げる間もなく「ムッシュ・ウメダ!」といわれてしまいまし。
目の前のレディは、シャトー・マルゴーで訪問客案内係の総指揮をとるビザール女史。 |
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シャトー・マルゴーの館。訪問客があるときにのみ、この鉄製の正門が開かれます。開いている門をバックにしたシャトーの写真がもっとも美しいのです。 |
「近々、というよりも、確か今週の金曜日の午前中にいらっしゃるのでしたよね」
「ハイ、ええ、そうです、どうも」と慌て気味の私。
初めてお目にかかったのが確か1993年。そのときを含めてもまだ三回しか訪問していません。で、この前にお目にかかったのは三年前です。それにも関わらず、単なるビジターの一人にしか過ぎない人物の名前が、なぜかくもスムーズに口から出てくるのでしょうか。
なかなか他人様の顔と名前を覚えられないこの身にとっては、シャトー・マルゴーから100キロも離れたサンテミリオンで、それも偶然すれ違った相手の名前が、かくも自然に素早く正確に出てくることなど、もう驚愕モノです。
世界的に有名なシャトー・マルゴーは、1855年にフランスが国家的な事業のひとつとしてメドック・ワインの等級格付けを行ったときに、すでに「一級」として高い評価を受けた、歴史あるシャトーです。現在このシャトーは、メンツェロプロスのもとにあります。
マルゴーを訪ねた日も、朝から快晴でした。
ひょっとして収穫している光景が見られるかなと、と少し期待していましたが、残念!すでに畑の仕事は終わっていました。
今回は、ちょうど三ヶ月前に、収穫の時期の見学は受け付けていません、と断られかけていたのを、「そこを何とか」とお願いしての訪問です。本当に他の見学者は見当たらず、ビザール女史が私たちにかかり切ってくれました。