ワイン 百一話
シャトー・ブラネール(Part 1)
シャトー・ブラネールのテリトリーは、もともとべイシュヴェルの一部でした。十七世紀の中頃、当時の領主であったエペルノン公ベルナール・ド・ラ・ヴァレットの死後、彼の財産は負債返済のため国家に没収されます。そのときに分割譲渡された区画が、今のワイナリーにあたります。
1680年、ジャン・バプティスト・ブラネールがこの土地を入手します。そして、彼の子孫である「デュリュック」家が1824年に、今に残るシャトーを建設しました。のちにシャトーは親類のギュスターヴ・「デュクリュ」の手に渡ります。以上の流れがシャトー・ブラネール(デュリュック=デュクリュ)という長い名前の由来です。1855年のメドック格付けでは四級に列せられました。 |
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いよいよ最後に訪問するシャトー・ブラネールのオーソドックスなスタイルのシャトーです。 |
1988年、写真に写っているパトリック・マロトーがこのシャトーのオーナーとなり、現在に至ります。
シャトー・ブラネールのラベルは文字だけのデザインですが、フランスから送られてきた便箋には、二階建てのかっちりした形の建物がプリントされていました。シャトー・ブラネールに到着し、正門から入ると、すぐに便箋どおりの左右対称のシャトーが目に入ります。
植木も正確にピラミッド型に手入れされており、赤いバラの配置にもこだわりがあるようです。几帳面に違いないシャトー・オーナーの気質がしのばれます。
応接室に通されてさらに驚きました。見事なシャンデリア、ゆったりとしたソファー、美しい絵画、アンティークの家具まであります。家具の上には、家族の写真が飾られていました。シャトーの応接室のはずですが、まるで個人の居間の感じです。
なぜか、物珍しげにきょろきょろとしてしまい、壁に飾られている、色刷りの絵を見て感動しました。フランス人は総じて骨董品が好きですが、これは中世の版画です。思わず、(あっ、本物)と心の中で呟きました。本物しかあるはずがありませんが・・・。