ワイン 百一話
ギリシア神話 5 (Part 5)
2011/01/18 PART 01 | 02| 03| 04| 05
話をワインに戻します。ワインはいつ頃からあったのでしょうか。
考古学的に認められている最古のぶどうの種は、黒海の東海岸に位置するグルジア共和国で見つかっています。放射線炭素年代測定で、紀元前7000〜5000年の時代に属するとされています。
ところで、野生のぶどうを採取してきてワインを造るには、いささか手間がかかりすぎます。そこで、人類はぶどうを場所を決めて栽培します。この栽培したという事実は、すなわちワインを造っていたということにつながります。ぶどうの栽培が始まったのは、紀元前五〇〇〇年頃であることは間違いないそうです。
このことに関してですが、グルジアでは埋葬品のひとつに銀の筒があり、なんとその中にはぶどうの枝の小さな切れ端が入っていました。来世でもまたぶどうを植えて、ワインを造り幸せな気分になれるようにとの、見送る人たちの死者への配慮に違いありません。
創世記よりもさらに古いとされているギルガメシュ叙事詩では、英雄ギルガメシュは不死の秘儀を求めて旅立ち、太陽の国に入ります。そこにある魔法のぶどう園で造られたワインを飲むことができれば、彼は不死身となるのです。
ぶどう園は「その木にはルビーの果実がなっていて、ぶどうの房と一緒に垂れ下がり、見るからにすばらしい。その枝は瑠璃で、見るからによい果実を実らせる…」とその情景が記されています。ところでこのぶどう園を管理していたのは、女神シドゥリ。バビロンではワインの供給に関する仕事は女性が支配していたようです。
ギリシア神話では、ジュピターがひき起こした大洪水のときに、生き残ることを許されたのは一組の夫婦のみであり、その子供オレセウスがぶどうを最初に植えた人として知られています。また別の子供であるオレセウスは、バツカスの助けを借りてワイン造りを覚えたそうです。