ワイン 百一話
シャトー・ブラネール(Part 2)
以前東京でお眼かかかったことがある、オーナーのパトリック・マロトー氏がディレクターのジャン・ドミニック・ヴィドー氏と一緒に、にこやかに現れました。
やあやあお久しぶりですねと挨拶を交わし、お土産に持ってきた緑茶を差し上げました。変り映えはしませんが、気は心というものです。「家内が緑茶が好きで・・・」と先様はポライトです。 |
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発酵の最終段階に入っているワインを、ディレクターであり醸造責任者でもあるジャン・ドミニック・ヴィドー氏が発酵槽から引き抜いてテイスティングさせてくれました。これは、とても美味しい〜とはいいがたい、しかし、実にありがたい貴重な経験でした。 |
ディレクターのジャン・ドミニックは、笑わん殿下のようでしたが、ワインの仕込が済んだ直後で疲れているのでしょう。あまり気にせずに、質問させてもらいました。
まず畑を見てください、とお願いしました。「そうしよう、雨が降りそうだから」とパトリック。
シャトーを出て畑までの短い道ですが、道にも、その脇の芝生にも、ごみがほとんど落ちていません。畑に行くと、すでに収穫が済んでいるのに、畑がきれいに掃除されていました。もう、感心してしまいます。
歴史の話をしているときに「あちらがシャトー・ベイシュヴェルの方向です」と教えてくれました。たしかカベルネ・ソーヴィニヨンの畑を見ているはずでしたが、まるでツツジの様な樹があります。ぎょっとして見つめていますと「それバラですよ」と・・・。「はぁ、ヴィンテージ物(時代物)ですね」といって笑われてしまいしまた。
いつもこんな調子なのですが、うだうだと取り留めのないことも含めて、何やかんや喋っておりますと、件の笑わん殿下も、ニコニコと話に加わってくれました。
やはり、醸造責任者と話ができませんと、取材している立場としては、どうにも身の置き所がないものです。畑で笑いを取って、などといいますと芸能人みたいですが、まあ、それはそれとして、雨が降り出す前に醸造所へ。で、その途中で、庭に面して面白い形の建物に目がゆきました。
「あれは何ですか」「オランジュリーですよ」「え〜え!! オランジュリー公園などとよくいわれるあのオランジュリーですか・・・、是非見たいです!!」「アハハ、オランジュリーに関心がある人は珍しい」となりまして、シャトー専用のオランジュリーの見学と相成りました。
オランジュリーとはオレンジ畑という意味です。それは百も承知です。しかし、オレンジは暖かい地方の果物でして、ボルドーはその産地ではありません。
建物の中は写真の通り、がらんとしていました。昔はオランジュリーだったけど、今は中には何もないよと説明されました。じつは、ずっと以前から、フランスの中でオランジュリーという言葉のもつ「別の意味」を是非とも知りたいと思っていました。