ワイン 百一話
オペラとワイン(Part 6)
2010/09/23 PART 01 | 02| 03| 04| 05| 06| 07| 08| 09| 10
賭けの段取りは次のように決まりました。まず、二人の士官はそれぞれの婚約者に「僕たちに召集礼状がきた、これから戦地に行かねばならない」と偽って別れを告げます。そして、いったん姿を消した後、変装して別人になりすまして、それぞれの恋人に言い寄るのです。婚約者の間柄であるのに、変装ぐらいで騙されることなど考えられない、などというカタイ話は、ここではなしです。お芝居なのですから。
この賭けが成立した時点で、では乾杯するかとなります。実はこのときに何を飲んだのかは、オペラの中では触れられていません。推理してみましょう。
舞台はナポリです。となると、ナポリのあるカンパニャ州の有名なワインで「キリストの涙Lacryma Christi del Vesuvioラ・クリマ・クリスティ・デル・ヴェスヴィオ」とか、隣の州でローマがあるラッチオ州の「あった、あった、あったと訳されているEST! EST! EST!エスト・エスト・エトス」も悪くありません。しかし、軍人が賭をするのですから、もう少しガッツのあるお酒がよいでしょう。
というところで、ロシアのウォッカに相当する、ワインを蒸留したお酒で、イタリアの特産品は「グラッパ」がここでは最適でしょう。
技術的な問題として、蒸留酒を造ることができたのだろうか、と心配される向きがあっても当然です。実は、蒸留技術に関しては、われわれの祖先は、海水を真水に変える方法として、ローマ時代よりもずっとずっと昔から持っていたのです。