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オペラとワイン(Part 8)

2010/09/23 PART 01 | 02| 03| 04| 05| 06| 07| 08| 09| 10

 有名なシェイクスピア(1564-1616)の悲劇『ハムレット』を題材にした全五幕のオペラがあります。作曲はフランスのトマ(1811-96)です。
 ハムレットは中世のデンマークが舞台となっています。王であった父に死なれ、ハムレットは悲しんでいます。父の跡には、王子である自分ではなく、父の弟である叔父のクロードが王として戴冠してしまいました。さらに悪いことに、なんと、母であり前王の妃であったジュルトリュードが、あろうことか、王位を継いだクロードと結婚してしまったのです。
 遠くに祝いの宴が繰り広げられている様を、ハムレットは遠くから見ています。
 そこに、突然、前王の亡霊が現れ、自分はクロードとそれに通じた王妃ジュルトリュードに毒殺されたのだと、悲しげに語りかけます。有名なシーンですね。
 亡霊からすべてを聞いた王子ハムレットは、復讐を心に誓います。
 ハムレットは一計を案じ、前王が殺された顛末を、コメディアン一座に芝居として見せることにしました。デンマーク王宮の庭の中で、一座の団員達にハムレットは酒を振る舞います。
 この場面でハムレットが歌うのが「酒は悲しみを忘れさす」です。
 ところで、シェクスピアの原作には、このときハムレットが悲しみを忘れるために飲んだワインが書かれてありました。Rhenishレニッシュでした。
 レニッシュとは、シェイクスピア学者であるジェンキンスによれば<The common name given to Rhine wine.  It was the characteristic drink of the Danish upper classes.:ライン・ワインを指していう。当時のデンマークの上流階級が好んだ典型的な飲み物>と解釈されています。 
 どうやらハムレットが飲んだワインは、ドイツの白ワインだったようです。
 ちなみに、上質ドイツワインの一つであるスペートレーゼ(遅摘みワイン)が初めて造られたのは、一七七五年でした。したがって、シェクスピアが元気な頃にはまだありません
 作曲家のトマは、原作を十分に勉強しているはずですから、スペートレーゼのことは知っていたでしょう。ですが、フランス人はあまりドイツが好きではありませんので、飲んだかどうかは知りません。

 



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