ワイン 百一話
シャトー・オー・バイユ(Part 1)
東京にボルドー・ワインのミッション(使節団)が来て、ボルドー・ワインの騎士の叙任式が執り行われたときのことです。そうです、長嶋茂雄氏が名誉コマンダリーに就任したことから、大勢のマスコミ関係者が祝賀会場にカメラの列を作り、翌日のスポーツ新聞の第一面のカラー写真に、たまたま長島氏のすぐ傍にいた筆者も写ってしまっていたあの件です。
もちろん有給休暇を申請していましたので、そのこと自体にはなんの問題もないのですが、あう人ごとに、ワインの騎士とはなんぞやと説明をする羽目になり、結構大変でした。実は、このボルドー・ワインの騎士団なる組織はとても敷居が高くて、なかなか仲間に入れてもらえません。 |
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ぶどうの房から梗を取り除く、除梗機に内蔵されている、べらのような装置。いちどこれが見たかった。 |
というのも、この騎士団はいわば円卓の騎士的なニュワンスがあります。円卓の騎士として、テーブルに着くことがふさわしいと認められて初めて「共に食事ができる」というコンセプトなのです。
というところで、この円卓、すなわち食卓ですが、少々高くても食券を買うから座らせてよ、という訳にはゆきません。あるシャトーが仮に10席の一つのテーブルの席を押さえたとします。つぎに、そこに誰を座らせようかと考えるわけです。欧州の習慣から、夫人同伴がマナーですので10席とは、5組になります。
まずシャトーのオーナーあるいはそれに準ずる方で一組二人、次いで、これまでそのシャトーが騎士に推薦した人たちが、久しぶりにオーナーと一緒に食卓を囲みたいと望むわけですから、その人も呼んであげなければなりません。とりあえず二組四人が招待されたとしましょう。
なると、新たにそこに座れる人間はせいぜい二組四人です。そうなのです、あたらしく騎士にしてもらえるのは、たった二人なのです。そして、この式典は年にせいぜい二回ですので・・・・。いかに名誉ある地位かお分かりでしょう。