ワイン 百一話
ボンタンの騎士(Part 1)
フランスにあるワインの騎士の称号には、いわゆる三大タイトルがあります。
有名なブルゴーニュ・ワインの騎士(シュヴァリエ・デュ・タストヴァン)、シャンパーニュの騎士(シュヴァリエ・デュ・シャンパーニュ)そしてボルドー・ワインの騎士(ボンタン・デュ・メドック・エ・グラーヴ/ソーテルヌ・エ・バルサック)の三つです。 |
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時代を感じさせる石の舞台の上に勢ぞろいした審査員達。手前に叙任される人たちが着席しています。 |
ボルドー・ワインの騎士の正式名称についている「ボンタン」とは、木製の器で、醸造の過程で必要な小道具の名前をさします。何をするものかといいますと、発酵が終わったばかりのワインは、とても濁っていますので、その濁りを沈めて澄んだ上澄みを得る必要があります。これは「滓引き」と呼ばれる操作ですが、その方法の一つとして、卵白を泡立てたものを濁っているワインの中に入れる手法が伝統的です。醸造家たちは、ボンタンの中で卵の白味を泡立てるのです。
ワインの騎士的なる称号は、ワインの業界で活躍した実績のある人と、ワインのイメージ・アップにつながる有名人とが授章の対象となります。
ボンタンに関しては、過去に授章者した有名人には、小泉元首相、英国王室フィリップ殿下、エドワード英国王子、チャールトン・ヘストンたちがいます。
ボンタンの称号は、なかなかもらえないのですが、このような受賞者リストを目の当たりにすると、はじめから諦めてしまいそうです。それでも、頑張ってボンタンに叙任されるためには、何としても仲間に入れて欲しい執念が必要です(汗)。私はこれを「頑張って」2002年に貰いました。
あるとき、そのボンタン本部から《誰かボンタンの騎士として叙任されるに相応しい人を一人推薦してもよいですよ》という手紙が舞い込みました。《ボンタンに叙任されて3年が経過したので、あなたには他の人を推薦する権利が与えられました》、と書いてありました。
ワインスクールの副校長の顔が思い浮かびました。レストランを手広く成功させている女性です。直ちに推薦状をしたためました。
推薦が受け入れられ、彼女の秘書と3人でボルドーに行ってきました。
叙任式は市民公園の中で行なわれました。公園といいましても、緑豊かな、広々とした素晴らしい公園です。おりしも、花の祭典が行なわれている最中で、園内は美しく咲き誇る花でうずもれていました。
そこに、真っ白いイベント用のテントが、七張り立てられていました。中には白いテーブルクロスがかけられた丸テーブルが、所狭しと並べられています。準備をしている人に聞くと、祝賀晩餐会の参加者は800人とのことでした。