ワイン 百一話
シャンパーニュの騎士2(Part 2)
会場のド・カステルノー社の二階は500人ほどの人が集えるホールになっています。入ると、そこには式典のための舞台がしつらえられ、椅子が並べられていました。
そして、式典をおこなうところと乾杯する場所の間には仕切りがあるのですが、その仕切りはピュピトルと呼ばれるシャンパーニュつくりに必要な、傾斜台が並べられていました。いかにもシャンパーニュらしいしつらえで、心が和みました。開会を告げるホルンが鳴り響くと、会場を埋め尽くした参列者がお喋りをやめます。「審査員の入場です。全員起立。」と告げられました。 |
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叙任を受ける人がもらえるリボンとメダルです。グリーンが騎士です。 |
白いガウンの審査員が静々と入場し、壇上に並びます。審査員達は全員シャンパーニュメーカーのCEO達です。かれらの胸には、弾けるシャンパーニュの泡をイメージしたペンダントが光っています。
中央の審査委員長が、まずフランス語で、続いて流暢な英語で挨拶しました。
「まず、本日叙位を受ける人を紹介します。フランソワーズ・・・・」と名前が呼び始められました。レディ・ファーストの慣習にしたがって、8人の女性が先に呼ばれます。続いて20人の男性の名前が呼ばれました。間違いなく私が推薦した男性の名前も呼ばれました。ただ、Miyauchiという名前なのですが、「ミヨチ」とフランス語流に発音されていましたので、一瞬誰のことか分りませんでした。ただ、呼ばれる順番は分かっていましたので、本人がにこやかに立ち上がり壇上に上がったときにはホッとしました。
式典では、それぞれのシュヴァリエ候補者が、なぜこの人は今日ここにいるかという説明が、フランス語あるいは英語でなされます。「あなたは、シャンパーニュの振興に多大な貢献をされ…」などと説明されるのです。わがスクールの講師は、教育に情熱を傾け・・・とお褒めいただきました。そして、彼は長老の騎士からシュヴァリエ・ド・シャンパーニュのメダルをかけて貰い、「シャンパーニュの騎士」になったのです。
28人の叙任の式典が終わると、すでに準備されていたシャンパーニュを手に取り、乾杯とあいなります。大きなグラスになみなみと注がれたシャンパーニュを手にすると、実に幸せな気分になります。ですが、これは嬉しくもあり大変でもあるのです。
といいますのは、式典のあとから始まる晩餐会で、食事に合わせて六種類以上のシャンパーニュが供出され、絶え間なく注がれるからです。今からがんがん飲んでいては、最後まで辿り着けません(苦笑)。