ワイン 百一話
モエ・エ・シャンドン 2(Part 2)
長い歴史に培われたモエ社は、現在シャンパーニュ地方の広い範囲でよい畑を500ha以上所有しており、貯蔵庫の中で熟成されているワインはボトルにして9600万本もあります。世界最大のシャンパーニュ・メーカーです。
さて、シャンパーニュの製法が完成する以前から、泡の出るワインは、宮廷で持てはやされていました。といいますか、それよりもずっと時代が遡ったローマ時代にも、泡がぴちぴちしたワインは好まれていたといわれています。ジュリアス・シーザーは発泡しているワインが好きだったらしい、というまことしやかな伝聞もあります。 |
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ドン・ペリニヨンが過ごしたオヴィレール村の修道院 |
発酵とは、酵母の働きによって糖がエチル・アルコールと炭酸ガスになることです。これをアルコール醗酵といいます。アルコール醗酵に引き続き、ワインの中にあるリンゴ酸が乳酸菌の働きで乳酸と炭酸ガスに変化します。マロラクティック醗酵と呼ばれる反応で、ここでも炭酸ガスが発生します。
すべてのワインでは、自然の営みがこの二つを完了させるのが大原則なのです。ですから、昔からワインはできあがったときには、泡がピチピチしています。ただし、私達が日常的に飲んでいるワインは、この泡を十分にとばしておいてから瓶詰めしているので泡がありません。
さて、それではローマの皇帝達も、瓶に入った今のシャンパーニュのような飲み物を手に入れていたのかとなると、話は少し違ってきます。まず、ワイン用の瓶やコルク栓は、十八世紀になって初めて大量生産されはじめたものです。あの瓶とコルクが十分にないと、現在のような形のシャンパーニュは造ることも、保存することも、運搬することも難しいのです。