ワイン 百一話
アルベール・グリヴォー 1(Part 1)
グリヴォー社のムルソー・ペリエールと耳にしただけで、仕事は早めに切り上げてゆっくり飲みたい、と思ってしまいます。
なかなか訪問が難しいワイナリーと聞いていましたが、見学を希望したい旨の手紙をしたためて打診しました。歓迎しますとの返事です。これは、僥倖。ムルソー村はブルゴーニュ地方、コード・ド・ボーヌ地区でも南の端近くにあります。ムルソーは小さな村だしあれほど有名なワイナリーなので、行けば直ぐに分かるはずだと確信して出発しました。 |
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グリヴォー社はムルソーの中でも別格の畑「クロ・ド・ペリエールClos de Perrière」の単一所有者(モノポール)です。 |
時間のゆとりを持って、ムルソー村に到着しました。
ところが、道路の番地表示からは間違いなくこのあたりだと自信はあるのですが、グリヴォーと書かれた看板が見つかりません。うろうろしているうちに、約束の時刻になってしまいました。仕方なく電話を入れました。
お年を召した女性の声で「迎えに行ってあげますから、そこを動かないで」との指示です。
待てど暮せど迎えの車は来ません。ムルソーは小さな集落ですので、車ですと3分もあれば端から端まで通り抜けられるはずのところです。電話で催促するのも失礼だけれど、念の為にもう一度電話した方が良いかな、と思い始めたときでした。遠くのほうから、間違いなくこちらを目指してゆっくりと歩いてくる年配の女性が見えました。車で迎えに来てくれるものと思い込んだのは、筆者の早とちりでした。この地では、時はゆっくりと流れていました。