ワイン 百一話
ブシャール・ペール・エ・フィス3(Part 3)
《ヴォルネー・カイユレ・アンシエンヌ・キュヴェ・カルノ》は、実に1775年にブシャール社が初めて購入した、ヴォルネー村最高の一級畑です。ブルゴーニュ公フィリップが戴冠式で飲んだとされている格調の高いワインで、そのようなエピソードがうなづける、果実味とスパイスさに富み、バランスとれた素晴らしいワインでした。
ブシャール社の創業は、1731年ですからすでに276年の歴史を持っています。1775年にヴォルネー・カイユレを、1791年にはその後のブシャール社の象徴ともいえるランファン・ジェズュを購入します。そして1810年に、ルイ十一世とルイ十二世の手になるシャトー・ド・ボーヌを入手しています。 |
||
ポイントをついた丁寧な説明をして下さった西山雅己さん |
要塞であったこのシャトーの地下は、厚さ七メートルという素晴らしい内壁を有することから、ワインの熟成にとって最適な環境です。
ここには、今も数百万本の貴重なワイン熟成を積み重ねています。また、「ここには、50年以上も前のオールド・ヴィンテージのワインが5000本以上も静かに眠っています」とのことでした。
現在所有している自社畑は、実に130haですから、コート・ドールでは最大級のドメーヌです。自社畑のうち、特級が12ha、一級が74ha。特級の中にはモンラッシェもあります。
1995年、ブシャールは老舗のシャンパーニュ・メーカーの社長であったジョセフ・アンリオを十代目の社長に迎え、今日に至ります。彼はテロワールの特性・個性を生かしたワイン造りが必要と考えます。そのために、ぶどうの収穫量を減らし、化学肥料も最小限として、品質の向上を成し遂げました。
ここでは、畑のサイズに合わせた小さな樽を使用しているほか、多くの特級や一級は樽で直接発酵させて濾過処理せず瓶詰めされます。樽にもこだわりをもち、一九九九年にはワインの醸造に大きな影響を与える樽も、自ら造るべく製樽会社を設立しています。
これらの努力が実を結びロバート・パーカーのワイン・アドヴォケイトで秀逸であることを示す、四ツ星の評価を受けています。蛇足ですが、パーカーはパワフルなワインが大好きな傾向にあり、ボルドーに比べてブルゴーニュへの評価は総じて低目です。そのことを念頭におくと、パーカーも好みが変化しているようで、大層興味深いところがあります。