ワイン 百一話
ブシャール・ペール・エ・フィス 2(Part 2)
「お待ちしていました」と感じの良い青年が出迎えてくれました。あらかじめネット検索していましたので、彼の名前が西山雅己さんとは知っていました。我が家の次女と同じ年頃のはずです。ブシャール社が260年の歴史上、初めての外国人社員として採用したのが日本人の彼でした。
まずは地下のセラーの中でのテイスティグです。間違いなく私たちのために新たにあけられた、白ワイン5本、赤ワイン5本がテーブル代わりに立てられている古色蒼然とした樽の上に並べられてありました。「1時間以上前から抜栓してあります」。感謝の気持ちと同時に、嗚呼もったいない・・・と。結婚式の披露宴のお料理を、3日に分けて食べたいなと思うのと似ています。 |
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大きな木製の醗酵桶、新しい樽、ステンレス製の発酵槽と 見る者を圧倒する醸造所でした。 |
白の《ムルソー・ジュヌヴリエール》も《ムルソー・ペリエール》も《コルトン・シャルルマーニュ》も極め付きの水準の高いワインでした。また、パワフルな赤のグラン・クリュである《コルトン》はやはり頑丈なワインでした。
ここでは、歴史的にも有名な次の2本の赤ワインをご紹介したいと思います。
《ヴィーニュ・ド・ランファン・ジェズュ》はボーヌ村に四へタールだけある、200年以上の歴史を持つ一級畑です。現在、ブシャール社が単独所有しています。ヴィーニュとは単に畑という言葉ですが、ランファン・ジェズュとは、《幼子イエス》という深い意味を持ちます。ダークチェリーやグロゼイユのような赤い果実の香りがあり、かつスパイシーです。繊細さと大胆さを同時に持つ風味があり、ビロードの様な舌触りです。このワインは、幼子イエスがまとうビロードのズボンのようだ、とまで評される、上品で滑らかなワインです。