ワイン 百一話
シャトー・ポンテ・カネ(Part 3)
それは、ひとつに炭酸ガスが発生する醗酵槽の見学は危険であるし、醗酵中のワインの質はワインの将来性を判断できるため、きわめて重要な企業の機密に属するからです。残念ながら、私にはそのようなプロの判断は出来ませんので、シャトーが心配するようなことは起きるはずもありませんが、醗酵中そして醗酵直後ワインの評価がいかに重要なことであるか位は、承知していました。
醗酵中のワインを醗酵槽の下の方から引抜いて、再び醗酵槽の上から戻す、ルモンタージュが行われている真っ最中でした。以前、一度、この醗酵中のワインをテイスティングしたことがあります。「栴檀(せんだん)は双葉のころから芳し」 といいますので、ワインの双葉も素敵に違いない、と勝手に思い込んでいました。ところが、醗酵中の赤ワインを口に入れますと、思い切り渋いタンニン分が口の中にザラツキ、とげとげしい炭酸ガスも沢山あり、なんとも異様な味わいでした。いかなワインの栴檀でも、醗酵が済んで熟成が始まる頃まで待ったほうがよい、と実感したものです。 |
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向かって左から2人目がオーナーのテスロン氏、中央はミッシェル・ローラン氏、そして筆者。 |
それでも、お願いして醗酵直後の、炭酸ガスによるピリピリ感が残るシャトー・ポンテ・カネをティスティングさせてもらいました。私なりに、「センダンフタバ」が感じられる素晴らしいものでした。
全くの蛇足ですが、ソムリエの試験を受けるときには、シャトー名をそれこそ沢山沢山覚えねばなりません。そこで、耳慣れない横文字のシャトー名を、なんとか簡略化できないものかと考えていろいろと努力するのですが、そのひとつ、筆者はワイン・スクールでこのシャトー・ポンテ・カネを「ホントかねぇ〜」と覚えるのですよと教えています。
シャトー・データです。シャトーの総面積は120haあり、そのうちの79haでぶどうが栽培されています。平均樹齢は40年。ブレンド比率にほぼ準ずる栽培面積比は、カベルネ・ソーヴィニヨン62%、メルロー32%、カベルネ・フラン5%、そして残りの1%はプチィ・ヴェルドと呼ばれる品種です。発酵槽は木桶、セメントタンク、ステレンスタンクとすべてが用いられています。発酵温度は発酵終了時28℃。発酵とかもしを合わせた期間は、平均して2週間。樽熟成期間は18ヶ月。新樽使用率は50%。清澄には卵白が用いられます。ろ過は軽めに行うとのことでした。年間総生産量は平均48万本。
セカンド・ワインの赤ワインは、レ・ゾー・ド・ポンテというブランド名前で、シャトー・ポンテ・カネと同じくらいの量が造られています。