ワイン 百一話
シャトー・ポンテ・カネ(Part 2)
シャトーに到着して、一瞬アレッと思いました。通常、シャトーの入り口は、いかにもワイン・メーカーという感じがする門構えなのですが、ここはまるで公園の入り口みたいでした。
車を降りてトコトコと歩いているうちに、シャトーの中庭に出ました。ぶどう畑はまだ見えません。地図を開いて、どうやら、入ってきた正門はシャトーの北の端に在ったのだと気がつきました。 |
||
メドック最大のぶどう畑が目の前に広がります |
中庭の真ん中に、3人の男性と1台の高級車といかにも上等そうな犬が1匹いました。人の気配に気がついてこちらを振り向いた3人のうちの1人は、東京で一度お目にかかったことがあるアルフレッド・テスロン氏です。
やぁお元気ですか、と挨拶を交わしたとき、彼と話をしていたひげ面の男性に見覚えがあることに気づきました。面識があるのではなく、何かのグラビア記事で見たことがある顔です。
ミッシェル・ローラン氏ですよ、と紹介されました。
あ!そうでした。世界的に著名な醸造家です。そういえば、今回のシャトー訪問に際して予習していた文献にも、醸造部門のコンサルタントとして彼の名前がありました。シャトー・ド・ヴァランドロー、ル・パンなど、いわゆるシンデレラ・ワインを造り上げた伝説的な人物です。ローラン氏には沢山聞きたいことがありましたが、今日の目的はシャトー・ポンテ・カネ訪問ですので、あいさつのみにとどめました。
醸造所内は写真のようにがらんとしていました。ですが、すべての収穫は昨日済んだばかりで、機械類もさっき洗い終わったときなのですよ、と聞くと、逆に醸造段階の最前線にいる実感がわきました。
幸いなことに、醗酵が開始した直後の醗酵槽の中を見せてもらえました。このような機会は、時期的に今のタイミングしかありませんし、その前に見せてもらえること自体が例外的なのです。