ワイン 百一話
ドメーヌ・シュヴァリエ(Part 3)
これまで、何度もあちこちのワイナリーを見学していますが、櫂入れ見る機会はそうはありませんでした。「見ますか」といってくれたので、私は大喜びしました。赤ワインを造るときには、果肉も皮も種も一緒に醗酵槽に入れます。すると、醗酵がはじまると、これらの皮などがまるで「浮き蓋」のように、醗酵中のワインを覆うのです。ところで、この浮き蓋たるや、生半可なものではありません。ぷかぷかと浮いているのではなく、大の大人がその上に乗って歩けるくらいに、しっかりとしたものです。
そこで醸造の際には、この浮き蓋をワインの中に漬け込む作業が必要となります。写真は、人が上に乗ることができるくらいにしっかりした浮き蓋を、懸命に力づくで沈めているところです。 |
||
納得ゆくまで説明してくれた、飾り気のないワイナリーの主(あるじ) |
ワイン・セラーでは、昨年に樽詰めした赤ワインと白ワインをテイスティングさせてもらえました。このシャトーでは、熟成は短くとも一年半必要です。そういう意味ではまだまだ未完成なワインでしたが、未完成な中にも、力強い上質のワインになるに違いない片鱗がうかがえました。
なんでも勉強ですので、醗酵槽の中のものも飲ませてもらいました。これはワインというよりも、アルコールが入った強烈なぶどうジュースでした。物の本に、できたばかりのワインのテイスティングは専門家に任せて、あなた方は最終的な完成品のみを味わいなさい、と書かれてありましたが、まさにその通りでした。
ぶどう畑に面した、陽の光が入る明るい客間で、20年もの歳月を経た白のドメーヌ・シュヴァリエを飲ませてもらい、大満足でした。
実は、東京での件の就任式には、ひとつ後日談があります。式典翌日の各スポーツ紙の朝刊第一面は、「ミスター、ワインの騎士に」でした。ついでのことに、なんと、全面カラー写真の端っこには、私が小さく写っていたのです。
「先生、昨日、有給休暇とって、どこにいたかみんな知っていますよ」。ナースに冷やかされたものでした。
シャトー・データーです。赤ワイン:栽培面積は35ha。栽培密度は1ha当たり一万本。平均樹齢は30年。ブレンド比率はカベルネ・ソーヴィニヨン64%、メルロー30%、カベルネ・フラン3%。発酵槽はステンレス・タンク。発酵温度は発酵終了時32℃。(発酵+かもし)期間は20〜25日間。樽熟成期間は18〜22ヶ月。新樽使用率は50%。卵白を用いて清澄。年間総生産量は88,000万本。セカンド・ワインはレスプリ・ド・シュヴァリエ。
白ワイン:栽培面積は4ha。平均樹齢は35年。ブレンド比率はソーヴィニヨン・ブラン70%、セミヨン30%。発酵槽はオークの新樽35%。樽熟成期間は18ヶ月。ベントナイトを用いて清澄。年間総生産量は12,000万本。