ワイン 百一話
ドメーヌ・シュヴァリエ(Part 2)
ドメーヌ・シュヴァリエは一八世紀の地図に残っているくらいに、歴史のあるワイナリーです。そのワイナリーをベルナール・オリヴィエが手に入れたのは、1983年といいますから、まだ四半世紀と少しです。
しかしオリヴィエの不断の努力が実を結び、ドメーヌ・シュヴァリエはその素晴らしいワインで、高い評価を受けています。 |
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一階のフロアーに設置されたステンレス製の発酵槽の上蓋を開けて、二階のフロアーで操作している様子。液循環(左端)、櫂入れ(中央)と呼ばれる操作だが、炭酸ガスによる危険性と企業の機密性を伴うことから、見学が許されることはまずない。 |
19世紀以来のグレイト・ビィンテージの時のお話です。この日も、ほとんど雲ひとつない快晴でした。
約束の朝九時にドメーヌに到着すると、目の前に、ラベルのデザインそのままのドメーヌのエレガントな外観が広がりました。森に囲まれたワイナリーは、南向きのすばらしいぶどう畑と直線と曲線をうまく組み合わせたシンプルなデザインの建物でできています。
受付はどこだろうと探すまでもなく、「やぁ、元気そうで」といいながら、オリヴィエが出てきてくれました。
挨拶もそこそこに、「今年はやはり凄いですか」と聞くと、「いゃ〜世界中で、"今年のボルドーは一九世紀以来のすごい年だ”と期待されているので、夏が来てからというもの、収穫が終わるまで気の休まるときがなかったよ」と答えが返ってきました。
彼の話によると、まず9月の上旬に完熟したメルローが例年よりも早いタイミングで収穫できた後、一週間遅れてやはりカベネル・ソーヴィニヨンも例外的に早い時期で収穫を完了したとのことでした。ちょうど収穫している最中というタイミングを狙い済ませた訪問、のつもりだったのですが・・・。
既に収穫は完了していますので、醸造所内の見える範囲の器械は、すべてきれいに磨き上げられていました。
醸造所の中でふと見上げたところで、男達が何かしていました。「あ、ピジャージュ(櫂入れ)だ」と思わず声に出してしまいました。