ワイン 百一話
シャトー・スミス・オ・ラフィット(Part 3)
ランチの後、中庭を散歩していて、シャトーが経営するスパを見つけました。
ここのスパはたんなる温泉ではなく、ぶどうの果実を活用していることが特徴です。そういえば、いつか、裸の女性の背中にぶどうの実を塗りつぶしている写真を見たことがあります。なんと、あれはこのワイナリーが経営している、美容と健康のマッサージなのでした。 |
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朝日に映えるシャトー。元気な一日が始まります。 |
カティヤール一族が力を入れている更にもう一つのものに、化粧品があります。コーダリーCaudalieがその会社の名前なのですが、コーダリーとはワインを飲んだ後で感じる後味とか余韻のことです。
コーダリーが化粧品を始めたのには、ひとつのアドバイスがありました。あるときボルドー大学病院の先生が、ワイナリーを見学したあとしみじみと、「考えてみるとあなた方はとても貴重なものを産業廃棄物にして捨ててしまっているのですね。このぶどうの絞りかすやワインの滓の中には、もう無尽蔵といえるほどのポリフェノールがあるというのに・・・。」とつぶやいたそうです。
ことの発端はひょうたんからこま的なものとはいえ、それから後は、たいへんな努力がなされたはずです。そして、カディヤール一族はぶどうの種や滓から、化粧品やサプリメントを造ることに成功し、現在グローバルな展開を進めているほどになっています。この部門は次女のマチルダの仕事です。
ワイナリーに別れを告げようとしたとき、カディアール氏は一冊の書物にサインをして私にプレゼントしてくれました。写真が沢山ある、大きくて、少し重い本でした。
「この本の中の多くの写真は私が撮りまして、文章は家内が書いたのです。」とカディアール氏。写真はプロ並に素敵であり、文章も美しく、ハイセンスの出版物です。
「ワインを造る前は何をしていたのですか」と聞くと、「スキーを少し」とのこたえ。イエイエ、彼はただのスキー愛好家ではありません。彼はスキーのオリンピック選手だったのです。
ああ、神様は不公平だ。そんなに沢山彼らばかりにいい物をプレゼントしては、私達の分がなくなるぅ・・・と思わざるおえません。ですが、彼らがここまで来るには、どれほどの苦労を重ねたことか、並大抵な努力ではなかったに違いありません。神様はよく見ていらっしゃるはずです。
シャトー・データーです。赤ワイン:栽培面積は55ha。栽培密度は1ha当たり7,000〜9,000本。平均樹齢は35年。ブレンド比率はカベルネ・ソーヴィニヨン50%、カベルネ・フラン10%、メルロー40%。発酵槽はステンレス・タンクと木樽の併用。発酵温度は28〜32℃。主発酵(アルコール発酵)と醸し期間を含めると約3〜4週間。樽熟成期間は15〜18ヶ月。新樽使用率は80〜100%。ろ過も清澄もしません。年間総生産量は20万本。セカンド・ワイン名はレ・オー・ド・スミス。