ワイン 百一話
シャトー・スミス・オ・ラフィット(Part 2)
翌朝早く起きてしまったので、朝食の準備はまだできていないことを百も承知でレストランに。太陽が昇り始める直前で、辺りがほんのりと明るくなりはじめていました。前庭の池ではつがいの白鳥が泳いでいます。
レストランの中は、写真のように薄紫色に満ちていて、すこし神秘的な雰囲気でした。 |
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日が昇る直前の幻想的なレストランの中の雰囲気。庭の向こう側にはぶどう畑がみえています。 |
朝食後、シャトーとホテルの境の道にでると、朝の光が真横からシャトーに当たっています。シャトーのために太陽があるような、そんな錯覚にとらわれそうです。元気な一日が始まる予感がしました。
シャトー・スミス・オ・ラフィットは伝統を守りながらも、近代的でチャレンジ精神旺盛です。そのひとつですが、なんと赤ワインを樽の中で醗酵させていました。もちろんトライアルでしょうが、企業機密的なものだのに見せてくださり感動しました。書物や雑誌などで読んだことはありますが、実際に見たのは初めてだったからです。
というのも赤ワイン造りにおいて、樽の中で醗酵をさせては、ワインが出来上がってからぶどうの皮などからできる果帽を取り出すのが大仕事だからです。よくみると、樽の横に大きな出し入れ口が作られていました。なるほどと思える工夫です。
シャトー・スミス・オ・ラフィット赤1999 をテイスティングしました。
美しいガーネット色でレッド・カレントやトーストの香りがします。果実実が豊かで酸も豊富です。タンニン分が徐々にこなれてきている印象でした。
見学が済んだので、みんなで揃っておしゃべりしながらホテルのほうに歩きました。そのとき、とても大きなオブジェが、ワイナリーの敷地のあちらこちらに飾られていることに気づきました。このワイナリーでは、若い芸術家に斬新なオブジェを創らせているのです。
そういえば昨日の夜、暗闇の中で、大きな兎が飛んでいるオブジェを見てドキッとしました。オルゴゴゾ先生はその巨大な兎をさして、「私はこのワイナリーは好きなんだけれど、あの兎はどうにも気に入らないのですよ」といったものでした。
カティアール氏にその話をすると、彼は笑って「そういう人も確かにいます。ですが、あれがいいという人もいるのですよ。いずれにせよ、このように多くの人に話題を提供するのですから、創って大正解ですね」と済ました顔でした。なるほど。
「アッ、そうか、不思議の国のアリスの兎なのですね」と思わず高い声を出してしまいました。すると、「まあ、そういう風に思う人もいるし・・・」と暖簾にナントカでした。でも、それが当たっているようなニュワンスでもありました。アリスはお嬢さんの名前なのですから。