ワイン 百一話
シャトー・フィジャック(Part 3)
恐れ入っているところに、東京で一度お目にかかったことのあるシャトーのプレジデントがニコニコしながら現れました。ここで、ご老人からプレジデントにバトン・タッチです。
「お久しぶり、お元気ですか」と挨拶を交わします。目の前にいる当シャトーのプレジデントであるムッシュー・バラモンとは、エリック・バラモン伯爵その人です。ものの本によると、ご隠居さんのお嬢さんと結婚して、こちらにいらした由です。 |
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エレガントなお屋敷と、ワイナリーの敷地の中に庭まである「ゆとりのある」シャトーでした。 |
で、この伯爵様、写真のとおりのカジュアルな服装で、御自ら収穫中の畑を見回る力の入れようです。聞くと、今日からカベルネ・ソーヴィニヨンの収穫が始まったのだそうです。「もう収穫が済んだと思っていました」、というと「それはメドックですよ」とのこと。そうでした。大西洋岸にごく近いメドックに比べると、サンテミリオンは海岸線からすこし内陸に入るので、気象条件がやや不利なのです。
シャトー・フィジャックはサン・テミリオンにあって最もカベルネ・ソーヴィニヨンの比率が多いシャトーであり、そのことから「サン・テミリオンで最もメドックらしいワイン」と呼ばれています。
伯爵は、著者の矢継ぎ早の質問にフランクに答えてくれました。
シャトー・データーです。栽培面積の40haという数字よりも、このワイナリーはもう少し広いように見えるのですが、と申し上げるとワイナリーの真ん中に醸造所を置いてあり、その施設に加えて居住地区があるから全体で53haですよとのことでした。写真の館は、十六世紀からある建物で、十八世紀に庭が造られ、昔は動物も飼って自給自足していたとの話でした。
ワインの年間総生産量は平均して22万本。ぶどうの樹の平均樹齢は50年。ブレンド比率 (品種別の栽培面積)はカベルネ・ソーヴィニヨン35%、カベルネ・フラン35%、メルロー30%。発酵期間+醸し期間は1ヶ月。発酵温度は18〜28℃。マロラクティック発酵は3〜15日。樽熟成期間は18〜20ヶ月。新樽使用率は100%(材質はアリエ)です。セカンド・ワイン名はラグランジュ・ヌーヴ・ド・フィジャック。
ちなみに、ある年のメルローの収穫開始は9月4日、収穫終了日は9月28日。カベルネ・ソーヴィニヨンの収穫開始は9月29日、収穫終了日は10月1日でした。ところで、メルローの収穫期間は、実に25日間にもおよびますが、この間毎日収穫しているのではなく、3日間収穫した後、5日待機というように、ぶどうが畝によって熟す時期が異なるのを待ちながら、収穫時期を過ごしたとのことでした。