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ワイン 百一話


シャトー・キルヴァン [第101話](Part 3)

2010/03/23 PART 03

大きな黄緑のカゴの動きが早くなりました。それだけではありません。収穫する人たちが、ぶどうを入れた小さな篭を、そのままもって小走りにトラクターへと急ぎます。運搬用のトラックの荷台にあるぶどうも、雨に濡れては困ります。ワインを造るときには、水は一切使いません。ですから、ずぶ濡れになったぶどうを、よく乾いているぶどうと一緒に醗酵させるわけにもゆかないのです。

 明らかに降り出しました。もはやこれまで・・・。急いでみんなと一緒に、屋内へと駆け込みました。屋内では、運び込まれたぶどうは直ちに除梗され、粒状になったぶどうはベルトコンベアーの上を、ゆっくりと移動していました。
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醸造所に入ると、そこでは第二段階の選別が行われていました


 畑のときと同じように、ベルトコンベアの両側には5人ずつが向かい合って写真のように、じっと目を凝らして下を見ています。ぶどうの一粒一粒が厳重にチェックされていました。傷んだぶどうは、指でつまんで捨てられていました。ここでひとつ、あることを思い出しました。手を休める暇などとてもない、延々と続く仕事のように見えました。もちろん、休憩時間はあるはずですが、彼らの努力が美味しいワインにつながるのです。
ビカッと光った途端に、強大な音がして雷がごく近くに落ちました。次の瞬間、ベルトコンベアが止まり、明りも消え、醸造所の中はまるで夜のようでした。あーあ、というどよめきの後、立て続けに雷がいくつか落ちました。バリバリッとすごい音です。ものすごいスコールの音が聞こえて来ました。
心配してくれて有難う。でも、大切なところはほとんど済んでいますから大丈夫なんですよ、とナタリーにいわれるまで、思い切り心配してしまった私でした。
シャトー・データーです。シャトーの総面積は35ha。平均樹齢は32年。ブレンド比率にほぼ準ずる栽培面積比は、カベルネ・ソーヴィニヨン種40%、メルロー種30%、カベルネ・フラン種20%、プチィ・ヴェルド種10%。1haあたりの収穫量は42hL。発酵槽は主としてステンレス・タンクであり、セメント製も併用されています。発酵温度は発酵終了時29〜30℃。発酵期間は6〜7日。かもしは2週間、マロラクティック発酵期間は10日間。樽熟成期間は15〜18ヶ月。新樽使用率は40%。樽材はアリエとリムザン。卵白による清澄に引き続き、濾過も軽く行われます。年間総生産量は平均17万本。セカンド・ワインは、赤ワインのレ・シャルム・ド・キルヴァンです。

[ 今日の記事で、最初にお約束しました、101話目になりました。えっ、もう…101回と驚かれましたか。通し番号を付けていませんでしたので、私自身もごく数日前に数え直して、実は驚いたのですよ(笑)。
 紀行文として、ワイン学の復習としてしかるべきものをお届けできたと思います。今月はまだ一週間ありますので、31日までこのシリーズを続けます。
 レコール・ド・ヴァン初代校長、日本ペンクラブ会員 梅田悦生 ]

 



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