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シャトー・ラフィット・ロートシルト(Part 3)

2010/02/10 PART 03

写真の熟成庫は、その前の年に作られたラフィット用です。そこでは滓引きと呼ばれる作業の最中でした。滓引きとは、熟成中のワインの上澄みを引き抜いて、滓を残す作業です。残した滓はもちろん不要なものですから廃棄するのですが、この産業廃棄物の処理にワインメーカーたちは頭を悩ましています。ごくごく限られたシャトーで、滓をコスメティックやサプリメントに転用していますがそれは例外です。

この日、筆者は初めて残された滓に触れました。これほどあちこち見学しているのに、初めてのことがよくあります。滓は、プレス・ワインよりも色の濃い、しかし泥というほどには重くない、そして素晴らしく濃い黒味を帯びた赤紫色でした。たぶん、そのまま口に入れなどしたら、しばらくタンニンの渋さで何の味もわからなくなるに違いありません。
  photo
上澄みを移し変える滓引き作業の真最中でした


そういえば、グラーヴを訪問したときに、この滓を用いて新樽の色付けをしているシャトーを見たことがあります。赤ワインが服についたら容易には取れませんが、滓はその何倍も色が濃いのです。
滓引きの後は、蒸気で樽の中を洗浄し、亜硫酸で殺菌していました。
二つ目の熟成庫に行きました。滓引きがすでにほぼ完了した、二年前にできたワインが静かに時を刻んでします。ここでは樽が円形に並べられてありました。円形の中央には、小ぶりの作業台に見えるものがありました。何の作業をする場所ですかと聞くと、あそこに楽団が陣取ってカーヴの中でパーティをするのですとのことでした。なるほど。
そして、円形の真ん中辺りには、ロートシルト(ロスチャイルド)のエンブレムが床に埋めこめられていました。五本の矢は、五つの大陸に影響力を示すロスチャイルドの基本姿勢を表わしているのだと説明されました。この家紋は、シャトー・ムートン・ロートシルトも同じです。
いよいよ、シャトー・ラフィット・ロートシルトのテイスティングです。テイスティング・ルームよりもここの方がよいでしょうと、樽の上にローソクを立ててある場所に案内されました。
大きなグラスが用意されていました。なみなみとラフィットを注いでもらい、おかわりまでしてもらった、大層気分のよいテイスティングでした。
カシス、ダークチェリー、アーモンド、スミレの香りがエレガントで豊かです。口に含むと、ビロードのようなきめの細かい上品な味わい。酸と果実味が豊富で、タンニンも滑らか。とてもバランスがよいワインです。
ルイ王朝からあるワインなのです。国賓を迎えての宮中晩餐会でも供せられるワインのひとつでした。



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