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ヒポクラテスとワイン 4 (Part 4)

2011/02/15 PART 01 | 02| 03| 04

このような話を続けていると楽しいことばかりですが、ヒポクラテスに戻ります。
 ヒポクラテスは紀元前460年頃〜375年頃の古代ギリシアの医学者です。コス島の生まれで、父もヒポクラテスと称する医師であったそうです。彼の場合は、父から医学の手ほどきを受け、小アジア、ギリシアの各地を遍歴し、多くの哲学者、医学者と交わった後故郷に帰り、診療をほどこし、著述をあらわしたしされています。
 当時、最高の医師といわれ、七十巻近い「ヒポクラテス全集」を著しました(編集そのものは後世になって行われたとされています)。
 医学に関しては、人体の生理、病理について、人体は火・水・空気・土の四元素よりなり、人の生活はこれらに相応する血液・粘液・黄胆汁・黒胆汁によって左右されるとしています。そして、これらの四液の調和が保たれている状態をエウクラジーと呼び、人は健康であり、不調和な状態をディスクラジーと呼んで病気にあると定義しました。
 さらに、病気そのものと病気の症状は別物だと区別し、病的状態から回復しようとする力をフィジスと位置付けます。
 その結果、「病気を医するものは自然である」との説を確立するのです。
 ヒポクラテスは医学のみならず、医師の倫理・任務などについても多くの信念を述べていまして、近代まで医師の世界に大きな影響を与えました。
 その「ヒポクラテス全集」の第三巻には、治療の項目がありそこには、ワインに関する記述が沢山出てきます。
■不妊症の治療に関しての処方例:
《川蟹をワインの中に入れて窒息死させ、こうして得たワインを水と一緒に与えて飲ませる》、《プロマロスを焼いて叩き潰し、ワインに入れて与える》。この辺りまでは民間療法にもありそうです。しかし、《ラバの糞をよく焼いて細かくすりつぶし、ワインに混入して与える》。…・う〜ん、ラバの糞ですか。そのようなものを貴族の奥方に飲ませたのが知れた日には、アンフォラで頭を勝ち割られそうですね。
■痰の治療に関しての処方例:
《甘口ワインを飲ませる》。これは納得できます。痰がのどに絡むときには、水分とのどを滑らかにさせる液体が理想的です。
下痢の治療に関しての処方例:《褐色のワインがよい》、《渋い赤いワインがよい》。昔からタンニン分は便秘になりやすいとも言われています。その理屈を逆に使えば下痢によいでしょう。また、下痢の場合には水分の補給が大切です。また、ワインの酸は消毒作用もあります。
■婦人病の治療に関しての処方例:《シャクヤクの根をワインに入れて叩き潰して、与えて飲ませる》、《テレビンと蜂蜜とワインを温めて与えて飲ませる》、《空腹時には水で薄めない香りのよいワインを飲む》、《水で割った渋いワインを飲ませる》、《シクラメンの根をワインに入れて空腹時に飲ませる》等々とつづきます。ヒポクラテスの処方例を見ていますと、婦人病に関するものが最も多いように感じられました。ヒポクラテスは女性の味方だったのです。

 



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