ワイン 百一話
小説にでてくるワイン 2 (Part 2)
2011/05/31 PART 01 | 02| 03| 04| 05
ブラインド・テイスティングとは、何のヒントも与えられない状況で、グラスに入っているワインを見て、香りをかいで、味わい、そのワインが何であるかを当てる技術です。
たとえば、目の前のグラスに赤ワインが入っているとします。外観は濃いガーネット色で濁りはありません。ワインの辺縁の色調には、すでに若さを示す紫色はなく、しかし熟成を示すオレンジがかった感じもありません。このワインは若いワインでもなく、長い長い年月を経たワインでもないようです。色の濃いところから、ブルゴーニュで使われているピノ・ノワール種の可能性はあまりありません。ボジョレーを造るガメイ種でもないでしょう。仮にフランスのワインだとすると、ボルドーのカベルネ・ソーヴィニヨン種か、コート・ド・ローヌのシラー種あるいはグルナッシュ種かも知れません。イタリアのワインならばバローロかも知れません。このように色を見ただけで、いろいろと推測できます。
香りをとりましょう。黒すぐり、乳製品、それも白カビチーズのブリーの香り、木の香り、青茎・・・といろいろな香りがとれます。香りにはボリューム感があり、変化に富んでいます。これは上質のワインに違いありません。
味わいはどうでしょうか。ひとくち口に含むと、う〜ん、美味しい。果実味が豊富です。しかし、タンニン分がまだまだ強く美味しく飲めますが、もっと熟成させてから飲みたいワインです。酸はしっかりしており、アルコール度数は12.5パーセントくらいでしょうか。後味にタンニン分が残り、ワインが「もう少し待ってくれれば良かったのに・・・」とボヤいているようにも感じられました。
これはとびきり上等のカベルネ・ソーヴィニヨン種からできたワインですね。多分フランスでしょう。とするとサンテミリオン地区やポムロール地区というよりは、メドック地区の可能性が大。極上質ですから、仮に一級格付けとすると、やわらかい感じからみて、シャトー・マルゴーかな?余程良い天候の年、すなわちグレート・ヴィンテージと呼ばれる年です。1992年でしょうか。
このように段階を追って推測してゆきます。ですが、世界ソムリエコンテストにおいて超一流のソムリエが、答えを知っているギャラリー側、あるいはテレビの視聴者側からみると、まるで見当違いも甚だしい間違いをしています。それが現実なのです。
しかし、ブラインド・テイスティングを十種類行い、詳細に評価してゆくと、総合的に見るとやはり一流のソムリエの答えは、たとえそれは半歩であっても、より正解に近いのです。それも事実です。