ワイン 百一話
小説にでてくるワイン 5 (Part 5)
2011/06/28 PART 01 | 02| 03| 04| 05
最後になりましたが、ヴァルポリチェッラだけがイタリアのワインです。
<どれも口当たりがいいが、みんな同じワインだよ>とトニイ。そして<このような綺麗なラベルは付いているが、瓶の中味はどれもラベルとは全く違うということだ。ブレンドだ。大部分はイタリア・ワインで、それに多少フランス、場合によってはユーゴスラビア産が混じっていると思われるが、どこのワインと断定する事は困難だ>と結論します。
小説の中の出来事としても、見事なテイスティングです。
ちなみに、このようなイタリア・ワインをブルゴーニュのニュイ・サン・ジョルジュといわれて出されたならば、多分、ワイン・スクールに半年通った人ならば「これはピノ・ノワール種にしては出来そこないだな。」と思うに違いありません。
さて、中身の異なる六種類の赤ワインのうち、とりわけトニイはサンテステフ村のワインであるシャトー・カイヨーが気になります。そのような名前は聞いたことがありません。しかし、ラベルに描かれている美しいシャトーの絵はどこかで見たような気がするのですが、どこで見たかは思い出せません。
ボルドーには無名のシャトーが沢山あるのです。これはその道のプロに尋ねるのが最善と考えたトニイは、親しい知人であるボルドーの同業者、アンリー・タヴェルに電話をかけて、サンテステフ村のシャトー・カイヨーについて、教えて欲しいと頼みます。
なんと、タヴェルもシャトー・カイヨーの名前を知りませんでした。明日の夜までに調べておく。それが返事でした。
翌日再びタヴェルに電話したトニイは、シャトー・カイヨーが架空のシャトーであることを知ります。全く存在しないワインが、ボルドー・ワインとして売られていたのです。トニイは仲間と共にボトリングの会社にしのび込みます。そしてこの緊張の真っ最中にトニイはシャトー・カイヨーの絵が「シャトー・シュノンソーだ!」と気づくのです。膨大な量の偽造されたラインのラベルや盗品の酒もそこにありました。
表題の「証拠」でした。
ボトリングが会社の社長たちが殺人犯であったことが分かり、この物語が結末を迎えます。