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ワイン 百一話


映画に見るワイン 5 (Part 5)

2011/04/09 PART 01 | 02| 03| 04| 05| 06| 07| 08

映画の中のワインにはとても興味がひかれます。
硝子の塔
 1993年アメリカ・パラマウント社製作の映画『硝子の塔』では、色々なワインが出てきて、なかなかに面白いものでした。監督:フィリップ・ノイス、主演女優:シャロン・ストーン、主演男優:ウイリアム・ボールドウィンという布陣です。
 原題はSLIVERなので、直訳すると「細長い裂片」でしょうか。硝子張りの背の高い、高級な高層マンションが舞台です。
 シャロン・ストーン演ずるところの女性編集者のカーリー(35歳でバツイチという設定です)は、素晴らしい眺望がすっかり気に入り、この『硝子の塔』に引っ越してきました。細長い28階建ての高層高級マンションの20階です。
 さて、カーリーが親しい仲間を招いて、引っ越し祝いをしている最中、チャイムが鳴ります。そこにいるのは、同じマンションに住むジャック。招かざる客の登場です。ジャックは元新聞記者の作家なのですが、カーリーは彼のずうずうしいマナーに、不愉快だったことがあります。
「招待してないわよ」とカーリー。
 すると、ニヤニヤしながらジャックは「僕は鼻の利くたちでね」とひとこと。
 つづけて剥き出しのまま持ってきたシャンパーニュを、これ見よがしに掲げて「それにドン・ペリニヨン」。
 どうだ、といわんばかりのモエ・エ・シャンドン社製のシャンパーニュ、しかも最上級品のドンペリニヨン・ロゼなのです。ドンペリだけでも高いのにそれがロゼとなると、さらに高価。俗にいうピンドンです。
 目ざとくそのピンドンを見つけたほかの客が「入って、歓迎するわ」ととりなします。
 ややあって、ドアをノックする音。振り向くと、13階に住むジークです。
 紙袋に入れたお酒を差し出さすジーク。監督はここで「これも、ドン・ペリニヨン?」とカーリーにいわせます。「カリフォルニア・レッド」とさりげなく答えるジーク。
 ジークにとって高級ワインを買うことなど、なんでもありません。しかし、今日は、カリフォルニアの赤ワインをもって行くほうが、彼女の気持ちを惹きつけられる、と分析したのです。
 実は、ジークはこの高層マンションの、隠れたオーナーなのです。彼はマンションのすべての部屋に隠しカメラをセットし、密かにすべての住民を監視しています。ですから、引っ越し祝いが今日あることを、ジークはとうに知っていた、ということが映画を見ている側にはよく分かっています。
 引っ越し祝いのおひらきの時に、カーリーの台所にはカリフォルニア製と思われる白ワインも見えます。
 この引っ越し祝いに前後して、マンションでは不審な自殺が続きます。カーリーの前の住人だったモデルも、この20階から飛び降り自殺を図っていました。
 ストーリーはカーリーとジークの男と女の話にシフトし、そのようなある日、二人はレストランに行きます。テーブルの上にあるワインは、イタリア/ピエモンテ州ルフィーノ社製のキャンティ・クラシコでした。
 映画は、ジークがモデルを自殺に見せかけて殺したことを示唆して終わるのですが、フランスのシャンパーニュ、カリフォルニアの赤ワイン、イタリアのキャンティとワインが、場面場面で重要な役割を占めていました。



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