ワイン 百一話
小説にでてくるワイン 3 (Part 3)
2011/06/05 PART 01 | 02| 03| 04| 05
証拠
さて、最近読んだD.フランシス作の「証拠(ハヤカワ・ミステリー文庫)」は、秀逸でした。トニー・ビーチなるワイン商(32歳男性)がブラインド・テイスティングの力量をいかんなく発揮して、殺人事件の犯人探しに協力します。舞台はイギリス。競馬場のすぐ近くに厩舎を構える有名な調教師が、ガーデン・パーティーを主催します。
私は競馬にはとんと疎いので、調教師が何をする人で馬主が何かは、実の所よく知りません。で、小説が説明するところでは、お金を出して馬の所有権を持っているのが馬主。その馬主から馬を預かり、厩舎で面倒をみて競馬のレースに出られるように調教するのが、調教師のようです。
調教師にとっては、馬を預けてもらって、その管理料と教育費を馬の持ち主からもらうわけです。馬主が持ち馬を預けてくれなければ、仕事にあぶれてしまいますから、調教師はクライアントである馬主を、パーティーに招いてもてなすのです。なるほど。
ワイン商のトニイは、ゴンに飲み物をどっさり積み込んで会場へ。まず、たらいに水を張り、氷を入れて、シャンパーニュを立てて並べます。このシャンパーニュは「エペルネ産」だと説明されています。ひとつ目のたらいにシャンパーニュを、3ケース入れている様子が書かれています。36本のシャンパーニュが、立てて入るくらいの大きさのたらいが目に浮かびます。パーティーでシャンパーニュを冷やすとき、現実の問題としてよくバスタブが使われています。何しろ人数が多いのですから、ワイン・クーラー程度ではとても間に合いません。この小説ではテントを立ててのパーティーですから、バスタブは使えません。たらいです。
ワインをたらいで立てて冷やすと、ボトルの肩まで浸っていないことから、最初の1〜2杯があまり冷えていないことがあります。シャンパーニュも横に寝かせて、全体を冷やすことができればよいのですが、屋外ですから文句は言えません。ですが、あまり心配しないで下さい。シャンパーニュは栓を開けた途端、気泡が沢山出て、瓶の中身をかき混ぜて温度をほぼ均一にしてくれます。