ワイン 百一話
絵画に見るワイン 2 (Part 2)
2011/07/23 PART 01 | 02| 03| 04
マネ(1832-83)
フランスの画家で、平面的な画面構成が特徴です。晩年は印象派の影響を受けます。
ワインが出ている作品は『フォリー=ベルジュの酒場(1882年)』です。和名は原語Un bar sur Folies-Bergèreaの直訳。
この絵では、酒場で働く若い娘が画面の中心に、まるで女神のように立っています。年のころは、まだ17位でしょうか。手前のカウンターの上に並べられているお酒、花、果物。シャンパーニュが六本もあります。ほかに、ビールとウイスキーが数本ずつ。シャンパーニュの多さから、高級な店に違いありません。
マネは、鏡にうつる背景をよく使いますが、この絵でも店内の様子が鏡を通して見られます。着飾った人々が晩餐を楽しんでいます。鏡にうつる娘の後ろ姿と山高帽をかぶったひげを蓄えた男の顔。
娘はオーダーを待っているのでしょうか。目線がやや下を向いています。あたかも、自分とは住む世界が違う客席の人達を、見ないでおこうとしているようです。今でも、ヨーロッパの多くの国では、厳しい階級制度が残っているのです。百年前は、もっとはっきりしていたに違いありません。
『酔いどれの女(1877年)』にもお酒が見えます。原語ではLa Pruneスモモです。
舞台はパリのカフェ・ヌーヴェル・アテーヌ。すっかり酔っ払ってしまった中年の女が一人。テーブルに右腕は頬杖をつき、左手には火のついていないタバコ。目はうつろであらぬ方をぼんやりと見ています。思考は停止しているようです。ですが、肌の感じはまだまだ健康そうで、絶望とかどん底ではありません。
透明の酒が入ったグラスには、スモモがひとつ浮かんでいます。透明ですから、多分、蒸留酒のオー・ド・ヴィー(命の水)です。すでに何杯飲んだのでしょうか。目の前のグラスには、まだ手をつけていません。
このカフェは、ドガがアブサントを描いた場所としても知られています。