ワイン 百一話
叙任式(Part 5)
2009/11/02 PART 01 | 02| 03| 04| 05
称号の授与式では、3〜4人ずつが舞台にならび、一人一人についてワインの騎士に冠されるいわれが紹介されました。もちろん、女性叙位者優先です。なにしろ、レディ・ファーストの国なのですから。叙位はアルファベット順に行われましたので、私は最後の方でした。
「ドクトール・ヨシオ・ウメダ」。ついに私の名前が呼ばれました。この日を待っていたのです。 |
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ワインの騎士の正装です |
おもむろに立ち上がり、左に座っている次に叙位される白髪の紳士に『お先に』と会釈をして、舞台に向かいました。
前に進むと、審査員が「フランス語でいいですか、英語にしますか」と聞くのです。筆者が留学していた30年前頃は、フランス人が英語を使うなど、とても考えられない現象でしたが時代は変わったのです。「フランス語でお願いします」と丁重に答えました。
「ドクター・ウメダは、フランスに留学していた1968年から1972年の間、一日も欠かさずワインを飲み、常に脳細胞をアルコールに浸していた既往がある。そのお陰で、ワインのことがよく分かるようになった彼は、1992年にワイン学校の校長になり…」と紹介されました。
叙任申請の時に、略歴をフランス語で提出したのですが、このように楽しく『脚色』してくれるとは、予想もできませんでした。
「あなたは、永遠にブルゴーニュのワインを愛することを誓いますか」「はい」
「あなたは、これからもブルゴーニュのワインだけ愛することを誓いますか」「はい」
「あなたは、朝からブルゴーニュのワインをのみを飲むことを誓いますか」「はい」
儀式ですので、ここでは、イタリアのワイン・メーカーでも、はい、と誓うに違いありません(笑)。
「ブルゴーニュのワインの神の名にかけておいて、あなたをワインの騎士にくらいを授けます」
そういいながら,オレンジ色と黄色の縞模様のリボンに,タストヴァン(利き酒用の盃)のついた、大きなペンダントを首からかけてくれました。これが欲しかったのです。
「フェリシタシオン(おめでとうございます)」といわれ、「メルシー アンフィニマン(ありがとうございます)」と丁重に答えました。
歴代のワインの騎士が名前を連ねる分厚い本の最後の行に署名して、私の叙任が決定しました。