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ワイン 百一話


ジョゼフ・ドルーアン1(Part 1)

2009/12/22 PART 01 | 02| 03

ジョゼフ・ドルーアン社は1756に創立されました。日本では九代将軍家重の御世に当ります。あんな頃からワインを造っているのかと感動ものです。

ここでは、ありとあらゆるブルゴーニュ・ワインが生産されます。会社はボーヌにありますが、全地所60haのうちの36haまでが、白ワインで有名なシャブリなのです。そういえば、シャブリといえばドルーアンという広告を見たような気もします。ドルーアンは質の高いワインを造りますが、量も造るのです。ワイン専門のガイドブックでは、常に最上級クラスに位置しています。
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まあ、立て板に水の説明で感動しました。


ロベール(ロバート)・ドルーアンは1957年から経営に携わリ半世紀近く活躍した伝説の人です。彼は、経営に乗り出すや、ぶどうを大々的に植え替えています。
そのために、ぶどうの樹齢がまだ若い1960年代ではワインの出来映えは冴えませんでしたが、1970年代には少しずつよくなり、1980年代からすばらしいものが出来ています。これは、ぶどうは樹齢が30年を超えた頃から良質のものができる、という理論通りです。
ロベール・ドルーアンの優れたところは、250年以上もブルゴーニュでワイン造りをしている名門の出であるにもかかわらず、積極的に新大陸にも目を向け、アメリカはオレゴン州でピノ・ノワールから良質のワインを造ることに成功しています。
伝説的な人物として、多くの人から尊敬されているのも当然です。
さて、取材旅行で宿泊していたホテルは、オスピス・ド・ボーヌの直ぐそばですが、ジョゼフ・ドルーアン社の所在地もたしかその辺りでした。ですから、今朝はタクシーは要りません。
ショーウインドーを覗きこんだり、窓に飾られた美しい花を写真に撮ったりしながら、心静に時間が過ぎるのを愉しんでいましたら、今度は約束の時間が近づいたのにドルーアンが見つかりません。
やれやれ、といささか焦りはじめました。古めかしい建物の前を通りすぎると、すこし地味なカフェが見えました。かくなる上は、訊いたほうが早いはずです。
「すみませ〜ん、ジョゼフ・ドルーアンってどこですか」とグラスを磨いている、店の主らしき風体のご老人に尋ねました。すると、カウンターの前でビールを飲んでいた、見るからにプロの農夫という感じの年配の男性が、グラスをカウンターの上においたのです。亭主とビールの客は目を合わせて、やはり、という表情でした。どうやら、アレは、うちの客にちげぇねぇ〜、と話していたのでしょう。
まあ、メガネをかけて、ネクタイをして、カメラを肩からぶら下げている東洋人が一人でこの辺りで何かを探しているとすると、行き先はジョゼフ・ドルーアンに決まっているさ、といったところです。飲みさしのビールをカウンターにおいて、ニコニコしながら私を外に連れ出し、あれだよと指差してくれました。ビールの人はドルーアンの人でした。
なんと、通りすぎた骨董品的建物が目的地でした。



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