ワイン 百一話
ニュイ・サン・ジョルジュ/プリューレ・ロック1(Part 1)
ニュイ・サン・ジョルジュ村にあるプリューレ・ロック社の名前を知っている人は、なかなかのワイン通です。ここのオーナーはロマネ・コンティの共同経営者の一人なのです。
ロック氏は有機農法(バイオ・ダイナミックス)でも名前を知られている人で、写真通りのいかにも精悍な面構えでして、醸造家というよりも、映画クラディエーター(剣闘士)に続編があれば、主役に抜擢したいくらいのキャラの持ち主です。ロマネ・コンティの経営者ではあるのですが、彼自身もニュイ・サン・ジョルジュに醸造所を所有しています。 |
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プリューレ・ロック氏 |
東京で一度会ったことがあり、「ブルゴーニュに来るときには必ず寄ってくれ」といわれていましたので、「来ましたよ」と私の方も緊張感がありません。ところで、有機農法を実行している人は、なかなかにクセのある人が少なくありません。月の満ち干とか、天体がどうのこうのと信念を持っています。面と向かって<ご高説>を伺っていると、この人は宗教家なのだろうかと錯覚するくらいです。
今回も、それを覚悟していたのですが、なんと「バイオのことは東京で十分に話したから」とあっさり。「万歳!助かった」とは言いませんでしたが…・。
醸造所の見学をと希望する間もなく、車で出ようといいます。彼の愛車は小型のホンダでしたが、ブルゴーニュのクラディエーターが乗ると車はいっそう小さく見えました。この小ささが、ブドウ畑のごく近くまで行けてよいのだそうです。成る程。
クラディエーターは、アクセルを目一杯に踏み込んで、ホンダをギャーといわせながら飛び出しました。着いた先は、村のはずれにあるワインの熟成庫でした。