ワイン 百一話
オリヴィエ・ルフレーヴ 3(Part 3)
ここでは、別にもうひとつ面白い経験をしました。
フランス人の女性で、ともに三十代後半の元気そうな二人組が、一緒にルフレーヴ氏の説明を聞くことになりました。ボルドーに住むワイン・ライターだと紹介されたのですが、ブルゴーニュ・ワインがピノ・ノワール単独で醸造されていることを知りませんし、コート・ド・ニュイとコート・ド・ボーヌの区別がつかないようでした。 |
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向かって左がピュリニー・モンラッシェ村、右がムルソー村の畑になります。 |
初めは、ブルゴーニュのことをからかっているのか、あるいは心から馬鹿にしているのではないかと思いましたが、本当に知らないのだ気づきました。
そうでした、ボルドーのワイン・メーカーたちはブルゴーニュ・ワインについて余り興味を持ちません。逆にブルゴーニュの造り手たちも同様でボルドー・ワインが美味しいとは思っていないようでした。もちろん、みんながそうではありませんが…。
その彼女たちと、カナダから見学に来ている若い男性のワイン・ライターと南アフリカから来ている醸造家志望の若い白人女性そして私の5人はルフレーヴ氏のご好意で、昼食をご馳走になりました。ここに着いた時に、小さなレストランと感じたところは、やはりレストランそのものでした。見学者たちのために、簡単なテイスティングと軽食が有料で用意されていたのです。横のテーブルでは、ドイツ人の団体が何やら楽しそうにワイン談議をしていました。
この時のことです、くだんのボルドーのワイン・ライターが「ブルゴーニュは食べ物が美味しいわねぇー」などと言うものですから、「残念ながら、私はボルドーでは美味しいものにあまり当たりませんでした」とつい口が滑ってしまいました。ブルゴーニュ・ワインのことをほとんど知らないで取材に来ていることに、私なりに憤慨していたからです。
その後の反撃は思い出してもゾッとします。もちろん、あっさり負けているほど私はヤワではありませんでしたが、ワイナリーに迷惑を掛けないように初めは控えめにはしていました。
その場にいたブルゴーニュの人たちも、ご当地のワインのことをまるで知らないで取材にきた彼女らには、相当カチンと来ていたようでした。ですが、取材に来た記者に遠慮があるのは当然です。時間がたつにつれて、私の反撃も相当エスカレートしたのでした。これをフランス語でしたのですから、もう、芯から疲れました。
その後です。彼女たちが帰るや否や「ムッシュ・ウメダよく言ってくれました」と突然のように大いに盛り上がりました。
お蔭様で、テーブルの上に美味しいワインが更に何本も何本も出てきて、おつまみもチーズやらサラミやらいろいろ出てきて、カナダ人、南アフリカ人、そして店のスタッフとも「かんぱーい」「かんぱーい」と相成り、昼間から真っ直ぐに歩けなくなる位に飲んでしまったというおまけが付きました(汗)。
ちなみに、お食事代とワイン・テイスティング料をお支払いしますと言いましたが、「なんの」のひとことでお仕舞い。レンタカーでなくてよかったです。