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ラフォン伯爵(Part 3)

2009/11/16 PART 01 | 02| 03

写真に写っている館の向こう側に、小さな平屋の事務所がありました。中には、女性のスタッフが3人だけ。これが、かの有名なコント・ラフォン?!

「東京から来ました、ドクトール・ウメダです。お約束の時間よりも早く着いてしまいましたが、待たせていただいて宜しいですか」と丁重に挨拶しました。フランス人は、日本人がやって来たので当然英語で話し始めると思っていたはずです。にもかかわらず、フランス語が口から出てきて、少し意外だった様子でした。
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伯爵は背の高い貴公子でした


この日の訪問は、東京とムルソーとを三回往復したFAXで決まっていたのですが、出発の前に、よくあの敷居の高いコント・ラフォンが訪問を受けてくれましたねというニュワンスのことをいわれていました。ですから、私としては大分緊張していたのですが「ムッシュ・ラフォンはすぐに参ります」と秘書がにこやかに告げてくれたので少しホットしました。
何しろ、冠にコント(伯爵)とついているので、どのような古武士が出てくるのだろうと待っていましたら、なんと写真のような背の高い甘いマスクの金髪の紳士が現れましたので、嬉しくなってしまいました。紫色のブルゾンにノーネクタイ、濃紺のジーンズ姿で、ニコニコしています。彼そこが、有名なドミニク・ラフォンその人でした。会ったとたんに、私は張りつめていた緊張がとけて気が抜けそうでした。
当初彼の予定に合わせて、金曜日の訪問が約束されていたのですが、急にその日が都合が悪いというので、何がなんでもお目にかかりたいから月曜日はどうですか、といった経緯がありました。挨拶もそこそこに、「すぐに見学したい」というと、「もちろん」と一言。サッと側にあるグラスを二つ手にとって、そのうちの一つを私に差し出してくれました。
事務所の横から地下につながる階段を下ります。階段といっても人がすれ違うのがやっとこさというような狭い階段です。ここが本当に3つ星かいな、と思ってしまいました。「この時期に訪問したのだから、まずは、新酒を味わって下さい」とドミニク。それはそうだ。この時期では醸造所の仕事はとっくに終わっており、出来たばかりの今年のワインは樽の中なのです。
地下に降りて、大層驚きました。実に、小さなワイナリーなのです。そういえば、先程見た畑がコント・ラフォンの全てだとすると資料によると12ヘクタールですから、300m×400m。年間生産量は6万本。これは200樽と少しのはずです。目の前の光景はその通りでした。
このときのブルゴーニュ取材旅行では、コント・ラフォンが最初の訪問先でした。過去に見学に訪れたワイナリーといえば、ルイ・ラトウールとかピエール・アンドレといった大手ばかりでしたので、コント・ラフォンのあまりの小ささに驚いてしまったのです。そうでした、そもそもブルゴーニュの造り手は小さいのが原則であることを忘れていました。
モンラッシェ、ムルソーを始めとして赤ワインも含め、世界最高峰の新酒を伯爵自らに注いで貰って味わいながら、心から幸せな私でした。



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