ワイン 百一話
シャトー・フュイッセ(Part 3)
肝心のテイスティングですが、3年物のシャトー・フュイッセは、美しい濃い目の麦藁色で、白桃の香りや白い花の香りがあり、なめらかな口当たりと穏やかな酸が心地よい素晴らしいワインでした。1ha当たりのワイン生産量は35hL以下と、まさにグラン・クリュ特級に相当する造り方です。
シャトー・フュイッセのシャトーは、ラベルにもその一部が描かれていますが、15世紀に建造された、五角形の塔を持つ戦いのための砦でした。ちなみに、シャトーの前に見える、ボーリングのピンのようなものは、ワインのボトルの形に見事に刈り込まれた二本の植木でした。この植木も有名なのですよ。 |
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15世紀に建造されたシャトーときれいにトリミングされた植木 |
テイスティングが終わり、感謝して帰ろうとしますと、ヴァンサン氏が「駅まで送って上げましょう」と仰有って下さいます。ワイナリーのオーナーにそこまでしていただいては恐縮の極みですが、お言葉に甘えました。
「折角来たのだからソリュトレの丘が一番きれいに見えるところに連れていって上げよう」といってくださいました。なんと幸せなことでしょう。今回の旅行を計画したときに、なんとしてもこの丘を見てみたい、と思っていました。
雨上がりの細い曲がりくねった田舎道を車は走ると、対向車がすれ違う毎に、細い道を徐行する毎に、運転手(もちろんヴァンサン氏です)は顔見知りに人たちに手を振って挨拶していました。世界的に知られているこの醸造家は、きっと彼等の小さな村の大きな誇りに違いありません。
「あれがそうですよ」。そこには<人類の歴史よりも古い丘>がありました。
マコンの駅を列車が出たのは夕方の6時過ぎでしたので、辺りは薄暗くなっていましたが、まだ車窓の景色を楽しむことはできました。ぼんやりと見ていると、大きな川がありました。ソーヌ川です。そういえば、この辺りはソーヌ・エ・ロワール県でした。ロワール川の上流はここまで来ているのです。