ワイン 百一話
もうすぐボージョレ・ヌヴォ(Part 1)
ワインにはほとんど関心がない人でも、毎年秋になったらテレビや雑誌に取り上げられる「ボージョレ・ヌヴォ」の名前は知っています。
11月第3木曜日の解禁日前には、飲みたくとも飲めませんよ、というワインです。この新酒は、世界一斉同時発売という戦略が成功の鍵になりました。 |
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世界を席巻したボージョレ・ヌヴォの原点はデュヴフのワインでした |
日本は欧米よりも早くボージョレ・ヌヴォが飲める国です。そうなのです、極東のこの国では、ヨーロッパよりも8時間も早く11月第3木曜日が来てくれるのです。
いつの時でしたか、ボージョレ・ヌヴォが大層フィーバーしているときには、誰よりも早くヌヴォを飲むために、東京から成田に向かう特別列車が仕立てられたぐらいでした。特別列車は成田の税関の前で、11月第3木曜日の午前0時を待ちます。もちろん列車の中には、愛好家がグラスを片手にいまや遅しと待ち構えているのです。そして、午前0時少し過ぎには、目の前で通関したばかりのボージョレ・ヌヴォを開けて「乾杯〜!」。
大いに盛り上がりを見せるこの様子は、民放テレビで実況中継されましたし、NHKでも取り上げられました。
このときの中継では、午前0時きっかりに税関のゲートが開き、新酒を満載した大型トラックが全国に向けて、次から次へと長蛇の列を作って走り出すシーンも映っていました。
ある年、国事のために、ボージョレ・ヌヴォの発売が、国際的な解禁日から我が国だけ一週間遅くなったことがありました。そのときには、なんと香港からボージョレ・ヌヴォを持ち帰った人が大勢いて、私などは日本ではまだ売られていないボージョレ・ヌヴォの空き瓶を見せつけられて、大いに悔しがりました。
最近では、解禁日前には発売しないという約束の元に、ボージョレ・ヌヴォは11月第3木曜日の一週間前にはすでにレストランに納入されているようです。その最大の理由は、解禁日まで成田の保税倉庫で保管し、一斉に通関されては成田の税関の機能が一時的な麻痺をきたしてしまうからだと聞きました。