ワイン 百一話
ワインはラベルで飲む(Part 2)
まず「大層失礼いたしました」といいながら、ていねいに頭をさげ、あたらしいグラスを客の前に置きました。次にトレーを横に置いから恭しくボトルを両手に持ち、ワインを少し注いでから「いかがでございましょうか」と訊ねたのです。
くだんの客はそれを手にとって、多少とも勿体ぶって味わい「まあ、いいだろう」とひとこと。
どう考えても、新しいボトルが空けられた様子はありません。それならば、二杯目のワインも拒否すべきであるところです。しかるに、同じのボトルのワインに、ダメを出さなかったのは何故でしょう。
多分、ボトルを見せられては、それでも「これはシャブリじゃないよ」とはいいにくいところがあったのに違いありません。
このように、「ワインとは、ラベルで飲むものだ」という先人の教えが、実に当を得ているものです。
それにしても、シャブリほどワールド・ワイドなワインは他に類を見ません。それだけに、品質のヴァリエーションもすごいのが現実です。素晴らしいシャブリを何度も飲んだことがあります。ですが、一口飲んで、う〜ン残念、と思うシャブリもあります。ですが、それでもシャブリなのですから、当の本人も納得してしまうものです。
私は、自宅にお客様をお招きするときには、最初の白ワインはシャブリと決めています。<お客様にとって>名前を知っているワインを出されるということは、とても安心なことなのです。知らないワインを出されては、誉めないといけないけれど、どういっていいのか分かりません。しかし、シャブリだと「あ、シャブリですね」で話はつながります。