ワイン 百一話
ロマネ・コンティ(Part 1)
ロマネ・コンティといえば、泣く子も黙るロマネ・コンティではなかった、超高級ワイン。バブルの絶頂期にあっては、銀座のクラブで「ロマコン持ってこい」というお大尽が何人もいて、1本100万円の相場は当たり前だ、などといわれていたものでした。
さすがにいまは、そんな首を傾げたくなるような話はあまり耳にしません。とはいえ、今日のこの正常な状況下でも、ロマネ・コンティ(RC)を入手するには、少なくとも60万円は必要です。60万円という金額を口にしますと、先ず出される質問は「1本60万円のワインって、1本1万円のワインよりも、60倍美味しいのですか」。 |
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ロマネ・コンティの畑です |
実に率直な質問であり、一方答えに窮するというか、これまでの答えが正しかったのだろうかと、常々逡巡するところです。
客観的に見て、1本60万円のワインは1本1万円のワインよりも、やはり相当美味しいのですが、それが60倍美味しいのか否かは、飲む人に気持ち一つです。まず間違いのないところとしては、1本60万円のワインは1本1万円のワインでは出会うことが出来ない香りと味わいがあります。その、ほんの少しの違いが、1万円に59万円足さなければ口に入らないということです。
生まれて初めてロマネ・コンティを飲んだのは、いまはもうありませんが、有楽町マリオンの地下1階、酒蔵と呼ばれたワイン・コーナーでした。当時酒蔵にいた女性ソムリエの鈴木千麻さん(現在ボルドー在住)が指導するワイン会の最終回で、開店1周年記念でもありました。普段よりも会費が少し高いなと思いました。高いといっても、2倍ということはなかったと記憶していますから、後から考えるに大変なサービスです。
周りの人の表情から、なんだか高級なワインが出てくるのだな、と感じてはおりました。
「ワインは1本しかありませんからね」と念を押された上で、並べられた20脚のグラスにワインが少しずつ注がれ始めます。注いでいる千麻さんも、周りのお客様も大緊張の様子。
私はグラスを手に取り、(あ、いい香り)、(あ、美味しい)。ごっくん。一口でお仕舞い。
「え!もう飲んでしまったのですか」と驚愕され、周囲の非難に満ちた冷ややかな視線を全身に浴びて、私は初めて、これは大変なワインを飲ませてもらったのだと自覚しました。
そうなのです、私はロマネ・コンティとはなんのことだか、全然知りませんでした。
そのような程度で、ワイン学校の校長先生になれたのですか、とはいわないで下さい。20年以上前のことですし、そのあと猛烈に勉強したのですから(汗)。
RCに関して、私がここで賞賛する必要はありません。なぜ、あんなに高いのか、なぜ、特別に美味しいのか、というところが読者の関心でしょうが、ワインは農作物であるが故に、あのワインには神の摂理が働いているのだと思います。それ以上の理由付けは必要ありません。