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現役ソムリエのコラム


門司 健次郎氏「酒ひと話」〜信頼関係の「潤滑油」〜

2009/08/22 23:13 畑久美子

レコール・デュ・ヴァンにて10月31日(土)に開催いたします、日本酒1日講座の特別講師である、門司健次郎氏が読売新聞に連載されていた「酒ひと話」。
今回はその第2回目を掲載いたします。

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(2009年5月10日 読売新聞 朝刊より)

1990年代初めにベルギー勤務となり、日本酒を世界に広めんと、持てる限りの純米大吟醸酒を抱えて着任した。

現地では、相手国政府の役人や他国の外交官と付き合う。オフィスで会うだけでも仕事の話は出来るが、ランチに誘うと会話は仕事以外の話題にも及ぶ。
自宅のディナーに夫妻で招待すると一段と親密になれる。

食事そのものが目的ではない。自分のカウンターパートとの間で、いざという時に電話一本で話が出来る関係を作るのも外交官の仕事だ。要は仲良くなることである。
食事は信頼関係を築くための重要な機会であり、お酒は役に立つ潤滑油だ。

日本酒の知名度はまだ低かったので、とにかくいい酒を飲ませようと思った。
吟醸酒は現地の和食店でも出なかったから、自宅に招待するしかない。

持ち込んだ吟醸酒は直ぐに底を突き、パリに開店したばかりの日本酒販店に時々買出しに出かけた。せっかく往復600キロも走るからと、高くても旨い酒に手が伸びる。
日本でよりも余程いい酒ばかり飲んでいた。

和食ブームの到来前であったが、逆に手軽に食べられないだけに、日本人に招かれるとお客は和食を期待する。
そこでアン肝缶や塩ウニなど持参の和の食材と現地の食材で和食の皿を工夫し、日本酒を勧める。

同時に皆の前で上等のブルゴーニュの白の栓も抜く。
日本酒を強いてはいけないので、気に入らなければワインをどうぞという訳である。
このワインよりも上だぞとの気持ちも込めてある。
毎回、お客は日本酒ばかり口にし、ワインは私一人が飲む羽目になったが、嬉しかった。

外国人には日本酒に対する何らの先入観も偏見もない。自分の舌で味を判断し、旨いものを見分ける。
ワインを通じて本物を知っているからだろうか。本物の日本酒は世界に通用することを確信した次第だ。

ベルギーや後に勤務した英国では、利き酒会も数多く主催した。
現地の日本協会と協力したり、ケンブリッジなど大学のワインクラブの例会を1回拝借したりした。
ワインセラーでマスター・オブ・ワインに試飲してもらったこともある。

短い講演の後、十数種類のお酒とそれに合う和風の肴を味わってもらう。100人近い会合もあり、品揃えには苦労したが、多くの人が日本酒のファンになってくれて、大満足であった。

(外務省広報文化交流部長、酒サムライ)
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<特別講師 門司 健次郎 氏 プロフィール>
日本酒輸出協会顧問

外務省広報文化交流部長として、外国の国民、世論を対象とする文化外交を担当。
1952年福岡県生まれ。1975年東京大学卒業、同年外務省入省。国際協定課長、安全保障政策課長など専ら条約と安全保障を担当。
在 外は、フランス(研修)、オーストラリア、ベルギー、英国、EU代表部(ベルギー)に勤務。2003年より条約局審議官、防衛省防衛参事官を経て、 2007年3月より2008年7月まで駐イラク大使としてバグダッドに勤務。2008年7月より現職。酒サムライ、日本酒輸出協会顧問の肩書きも有し、日 本酒の海外普及にも尽力。

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***事務局より***

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