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現役ソムリエのコラム


「ワインとグラスのマリアージュ」 Part2

2009/12/17 田辺公一

前回のお話の最後に、理論にこだわるだけでなく、シチュエーションやTPO、飲み手の価値観や好みに合わせることが最も大事であるというふうに締めくくりましたが、
ではそういったニーズに対応していくために、まず知らなければならないのは「基本的なグラスとワインの相性」だと考えられます。とあるグラスメーカーでは、各ブドウ品種やその地域ごとにそれぞれに合ったグラスをデザインしているところもありますが、それら全てを揃えて対応しているレストランは、世界的に見てもあまり存在しないのではないかと思います。当然のことながらたくさんのグラスの種類を揃えて、ゲストのニーズに幅広く対応できる
というのがベストな考え方ではありますが、通常レストランにおいてさまざまな理由から
どんなグラスでも揃っているということはとても稀であり、一般的に考えれば、お店ごと
のコンセプトやポリシーによってグラスはワインと同じく、それぞれのお店のオーナーもしくはスタッフによって厳選されたものが揃っています。
極端に言えば、スパークリンワイン用以外は白、赤ワイン兼用の1種類のみというお店も存在するかもしれませんが、ワインの個性を引き出し価値を高めたい、より美味しく飲んでいただきたいと思った場合にはある程度の種類は揃えたいものです。それぞれのお店での条件もあるとは思いますが、レストラン側がゲストのためにまず知っておきたい、揃えておきたい代表的なグラスの形状として、赤ワインを飲む時によく聞く、「ブルゴーニュ型」「ボルドー型」というのがあります。「ブルゴーニュ型」バロン型(風船のような形をしていることから)というふうにも
呼ばれ、一般的にボウルの部分が広く横に広がり、それに対して口の部分がすぼまっているグラスのことを指しますが、その名の通りブルゴーニュの代表的な黒ブドウ品種である
ピノノワールから造られる酸味がエレガントでタンニン(渋み)の柔らかい赤ワインを美味しく飲むためのグラスだと言われています。対する「ボルドー型」チューリップ型(まさにチューリップのような形をしている)と
いうふうにも呼ばれ、ブルゴーニュ型に比べ口の部分が広いグラスのことを指します。
こちらはボルドーで有名な黒ブドウ品種カベルネソーヴィニヨンから造られる酸が穏やかでタンニンのしっかりとした赤ワインの特性を活かすグラスだと言われます。これらのグラスは香りの上がり方、舌への進入角度、酸化のスピード(香りの開き方)
など、さまざまな要因をもとに考えだされ、定着してきたものだと思われます。「じゃあカベルネフランに合うグラスは?」「シラーは?」「ネッビオーロは?」
などと探求心は拡がっていくばかりですが、それはまたの機会にお話できればと思います。ワインのティスティングと同じくまずは自らそれらのグラスを体感してみることが重要で、「いろいろなグラスで同じワインを飲んでみる(できれば5種類ぐらいで)」という興味深い体験を実際にしていただくとグラスのセレクトがいかに大事かということがお分かりいただけるのではないでしょうか。

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コラム作者:プロフィール

田辺公一
日本ソムリエ協会認定 ソムリエ
2005年 ロワールワインソムリエコンクールファイナリスト
2007年 キュヴェルイーズポメリーソムリエコンテスト優勝
神戸北野クラブ、ザ・リッツカールトン東京等、
ホテル、レストランでソムリエを務める
現在 恵比寿のワインスクール レコール デュ ヴァン講師


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